恋愛偏差値、測定不可能につき。【オリジナル短編 名前変換】

タイムカプセル・パズル　４　（ラスト） ページ11

「か、会長！！」

その衝撃で眼鏡が道に叩きつけられ、割れる。
きっと会長自身にも相当なダメージが伝わっているはずだ。

見ていられず思わず目をつぶった。その時。




「あのさぁ…別に痛くなんかねぇけど…」





聞き覚えのある声が、閉ざされた視界の中で響いた。





「眼鏡割られると目つき悪くなるから困るんだよなぁ…な？」





次の瞬間聞こえる硬いものを折るような音。


目を開けるとそこには。


「城山…かいちょう…？」


眼鏡をかけておらず、鋭い目つきの会長と、道に倒れ伏した男の片割れの姿があった。


その姿に、私を掴んでいた男が息を呑むのを感じた。


「おま、もしかして隣の県の、あの西の狂犬、城山蓮か⁉
　３年前に突然姿を消した、喧嘩最強っていうあの…！」


西の、狂犬？城山会長が？
確かに、今の会長の目つきも、聞き覚えのある乱暴な言葉づかいも、３年前のあの不良に似ている。
でも、会長は真面目で品行方正で…

混乱している私をよそに、会長は私を掴む男の手に鋭い眼光を向けた。


「だったら、なに？」


「っ、くそ…！」


男はたまらずといった様子で私を離し、相方の男を車に押し込めて去っていってしまった。


・
・
・

「…あ、あの…」

しばらくの沈黙のあと、おずおずと口を開く。

すると会長は眼鏡を拾い上げてから、鋭い眼光のまま柔和に笑った。

「バレちゃったね。
　３年前、一目ぼれして助けた女の子に『不良は怖い、目つき怖い』って言われてから全部卒業したつもりだったんだけどなぁ…。」

「…え？」


３年前？ 『不良は怖い、目つき怖い？』



一目ぼれ？？



「その子に応えられるよう、高校入学をきっかけに変わろうとしたんだけど、親の都合で隣の県から引っ越すことになってさ…。

　もう会えないと思っていたけど、まさかその子が俺と同じくこっちに引っ越して同じ生徒会に入ってくれるとは思わなかったよ。」


バラバラなパズルのピースが当てはまっていくのを感じる。

同時に顔が爆発しそうなほど熱くなる。




「というわけでAさん？
　城山蓮は好きな子の一声で不良をやめ
　好きな子に手を出されたら狂犬に戻っちゃうような男ですが

　少しでも可能性があるなら考えてもらえませんか？」


「はい……、よ、よろしくお願いします…。」



この日、私のタイプが『真面目で眼鏡なしだと目つきが鋭くなる元不良』に更新された。

画面越し片思い　１　（幼馴染×正体秘密の配信者）→←タイムカプセル・パズル　３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す