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「マフラー巻いとけよ、外寒いから。」
「……ん、…わかってる、」
全部の準備が終わって、ごついダウン着て、もっこもこになって、スニーカーを履く。
スニーカーなんて、いつぶりかな。
この前に一時退院した時は、ずっとサンダルだったよな、なんて思い出しながら、かかとを入れるけど、
なんか、変。
地面が揺れて、ベッドから立てない。
「どした?……ちょ、おまえ、顔色っ、」
「…んーん、…大丈夫、」
「大丈夫じゃないやろっ、」
「…大丈夫だからっ、…ちょっと、まって、…?」
さすがに、ごまかせなくなって、ドアを開けて待ってくれてたはずの大毅くんが、またベッドまで戻ってきた。
大丈夫だって、言いたくて、はっきりとその顔を見つめるけど、大毅くんも揺れてる、なんか、ぐらぐらしてる。
でも、大丈夫なの、すぐ治るから、たぶん、だからまって?
そう思いながらも、だんだんと襲ってくる、気持ちわるさに耐えられなくなって、自然と、頭が下がってきてしまう。
気づけば、完全にうつむいた状態、そんなわたしのからだを、大毅くんの思ったよりも大きな手が、さすってくれる。
その温もりは、着てるダウンが分厚くてわかんないけど、ありがとう、大丈夫だから、こんなの、こんなの。
おばあちゃんのおせち食べたい、頭いたい、治んない、なんでっ、せっかく帰れるのにっ。
イヤでイヤで、悔しくて悲しくて、思わず涙が出てきた。
それと同時に、お腹の奥からぐっと押し寄せてくるもの。
まって、やだっ、大毅くん、離れてっ、!
慌てて突き放そうと手を伸ばすけど、ダメだっ、口押さえてもムリっ、助けてっ、!!
吐くっ…………!
「…Aっ、!!!」
そっから、吐いたのか吐いてないのかは、わたしにはわからない。
けど、その声を聞いたのを最後に、いつもならじわじわと消えていくはずの意識が、パンッと一瞬で消えた。
あぁ、これが、急変、ってやつなのかな。
のんも、こんなに怖い思いしたのかな。
わたし、死んだかも。
空になったわたしの病室を、今、天井に頭ぶつけながら、ボーッと見てる。
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移行します。
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みき(プロフ) - いつも楽しく拝読しています。毎日更新されているか楽しみで、お話が続くのが嬉しいです。お忙しいとは思いますが、更新頑張ってください! (2019年10月26日 23時) (レス) id: 80bf883441 (このIDを非表示/違反報告)
Riru(プロフ) - のんちゃんのお手紙で涙が出ちゃいました、、西埜さんが選ぶ言葉がほんとに大好きです。 (2019年10月24日 12時) (レス) id: 52537ea43d (このIDを非表示/違反報告)
りりあん(プロフ) - 西埜さんの文章がすごく好きです!これからもずっと応援しています! (2019年10月18日 4時) (レス) id: bb098296da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉都香 | 作成日時:2019年10月15日 23時