Sincere love*061 ページ15
.
8時を回った。しかし彼は来ない。やっぱり期待するだけ無駄だったらしい。それに少し安心している自分もいた。もし彼が来たとして私はどうしたらいいのか分からなかったから。
この時間になって彼が来ないということは、今日はもう来ない。そういうことを表している気がした。
気にしていても仕方ないと奮い立たせるように自分の頬を叩く。
10時になればいつものように佐々木さんが1番に来てくれた。
「おはようさん、一日ぶりだね」
「そうですね、いつものでいいですか？」
そう聞くの佐々木さんはあぁ、それをお願いするよ。と言ってから今度はなんだい、と言った。
「え？」
「顔が暗いよ、店がやってないあいだに何があったってんだい、言ってごらん」
やっぱり佐々木さんには叶わない。隠そうとしても隠しきれていないらしい私の気持ちは言ってしまった方が楽なのだと思う。
「今準備してくるので、朝食をお持ちしたらそこでお話を聞いていただいてもいいですか？」
「もちろんだよ」
そう笑ってくれる佐々木さんは65歳には見えないほどに若々しかった。
「お持ちしました、いつものです」
「おお、今日も美味しそうだね」
「ありがとうございます」
そう言って頭を下げれば佐々木さんは自分の向かいの席に座りなさいと合図してくれた。
店内にはまだまだ人が多くなかった。そのため少し話しても仕事には影響が出ない。
「失礼します」
と声をかけても佐々木さんの向かいに座るとどんなタイミングでもいいから心が決まったら話なさいと優しく言われてるような気がした。
「…見つけたんです。私がずっと追いかけてきたあの人を」
そう言えばやっぱり目を見開いてサンドイッチを食べるのをやめた。
「…それはもしかしてこの間言ってた…」
「えぇ、彼です。だけど、私彼が夕希子姉ちゃんをそうしたとは全然思えないの。」
そう言えばそうかいと言って佐々木さんはそれ以上踏み込んでこようとしなかった。
「Aちゃんがそう思うならきっとそうなんだと思うよ」
それだけ言うとまたサンドイッチを食べ始めた。たった一言なのにその言葉に救われたのでやっぱり佐々木さんはすごいなと思った。
.
Sincere love*062→←Sincere love*060
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 599人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
青龍 葵(プロフ) - 誤字でしょうか？P58の最後、六郎の家にて「一人のの重みがなくなったソファに…」の「一人のの重み」→『の』多いのでは？一度、確認してみて下さい！ (2018年3月22日 3時) (
レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
烏龍茶(プロフ) - 雫さん» コメントありがとうございます！返信が遅くなってしまい申し訳ありません！！面白いと言って頂ける作品をお届け出来て良かったです。続編の方もよろしくお願いします！ (2018年3月22日 0時) (レス) id: 574d66a4d8 (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - 面白かったです！続き、お待ちしてますね|´-`)ﾁﾗｯ (2018年3月21日 12時) (レス) id: a9d8810827 (このIDを非表示/違反報告)
烏龍茶(プロフ) - ぷりんさん» プリンさん！！！！！！私の記憶にはしっかりと…。感動的な終わり方と言っていただける作品を作ることが出来て本当に良かったです！私の文章が好きだなんて私には勿体無いお言葉ですが、支えにこれからも書かせていただきますね(;_;) (2018年3月21日 10時) (レス) id: 574d66a4d8 (このIDを非表示/違反報告)
烏龍茶(プロフ) - しばさん» コメントありがとうございます！涙を流していただけるなんてホントになんだか書いてよかった！と思いました！なんて嬉しい言葉ばかりくださるんですかね…(*´-`*)続きも新作もお待ちください、ぜひこれからもご愛読いただければと思います！ (2018年3月21日 10時) (レス) id: 574d66a4d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：烏龍茶 | 作成日時：2018年3月18日 19時
