月に恋せよ暦ガール 【4】

月恋 第151話 「みんなの兄貴分最高説」 ページ9

「海さん否、海様。後生ですから先程の私の奇行は忘れて下さい」

いまだにニコニコ、此方を微笑ましそうに眺めてくる海さんに半泣き状態で懇願する。

私は今日一日でどれだけ恥ずかしい行動をすれば気が済むのだろうか。もう朝から今日と言う一日をやり直したい気分だが、それはそれで辛い。

「忘れるし誰にも言わないから気にすんな!」

「ありがとうございます!」

これに関しては優しい笑顔を浮かべたまま、黙っててくれると言う海さんに頭を下げる他無かった。

海さん最高! さすが皆の兄貴分。

此れが隼兄や新さんだった場合、こう簡単には行かない。

悪魔でも私の想像ではあるが二人の場合、意味深笑顔で「えー、どうしようかなァ」と言われ黙っている条件として無理難題を押し付けられたり、イチゴ牛乳をねだられそうである。

今、此の場に居たのが無条件で黙っていてくれる海さんで本当に良かったと胸を撫で下ろす。

「ああ、そうだ。これ、涙と郁からな」

そんな私に今、思い出したかの様にスポーツドリンクと独特なセンスを持って描かれた黒猫のヤマトの絵を海さんから受け取る。

此の独特過ぎる絵は言わずもがな、涙兄の絵だ。

紙の隅に「早く風邪が治りますように」と書かれているのに気付き、クスリと小さく笑みを溢して絵をそっと抱き締めた。

スポーツドリンクも独特なヤマトの絵も凄く郁兄らしくて、涙兄らしくて嬉しい。

「こっちは陽が買ってきたプリン。後、始と春が届けに来た林檎。それから駆と恋が買ってきたゼリーと、葵と夜が冷蔵庫に入れていったアイスクリーム。次いでに新が置いていったイチゴ牛乳と………あ、さっき隼と買ってきたのど飴と桃の缶詰もあるぞ! どれか食べるか?」

郁兄と涙兄からのお見舞い品を受け取った後、「それから――」と海さんは続けざまにポンポンと他の皆さんから預かったであろうお見舞い品を袋から出していく。

皆さんからの心遣いを嬉しく思う反面、余りの多さにこんなにも自分が貰ってしまって良いのだろうかと少し困惑する。

そしてお見舞い品の中に見覚えのある怪しいエキスを発見し、更に困惑。え、これ何処からツッコめば良い?

どうやら悪夢が正夢になってしまったようだ。

多分否、確実にマンドラゴラエキスをサラッとお見舞い品の中に紛れ込ませた犯人は隼兄。

風邪が治ったら、桃の缶詰とのど飴のお礼をしに行く次いでにツッコミ入れに行こう。そうしよう。

他の皆さんには普通にお礼を言いに行こう。

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