月恋 第164話 「流石としか言いようがない」 ページ22
「その点は僕のおまじないでケセラセラさ!」
自信に満ち溢れ、キラキラした笑顔で堂々とおまじないがあるからと宣言した隼兄に思わず顔を両手で覆ってしまった私に非は無いはずだ。
「……おまじないですか」
「そう、おまじない。僕の力で、他の人には僕達の姿が違う人物に見える様に出来るから、問題ないよ」
隼兄は顔を覆って呆れる私を他所に、すっかり冷めきってしまった紅茶に目を落としながらそう告げた。
確かに隼兄はプロセラの白き魔王様と呼ばれているだけあってか、よく彼の周囲で不思議なことが起こる。
魔界から変な生き物を気紛れで召喚してみたり、大雪を降らしてみたりが良い例だ。
そんな彼のことだ。12人もいる人気アイドルの姿を、他の人にはバレないようにすることくらい容易いだろう。
それでも、もしものことを踏まえると一抹の不安が残る。何処と無く納得しきれず、心配そうな表情を浮かべる私の心の内を察してか隼兄は再び大丈夫だよ、と笑った。
「僕のおまじないに抜かりはないし、大や奏にも許可は貰っているよ」
それにね、と隼兄は言葉を続ける。
「僕達はアイドルである前に只の人間。メディアの露出によって、多くの人達に顔が売れているだけの一般市民の一人。お祭りを皆で楽しむ権利がある筈だ。けれどAちゃん、君の人目を気にする気持ちも大いに分かる。自分の知らぬところで叩かれて、好き放題言われるのは勿論嫌な気持ちにもなるし怖いと感じる。だからと言って、自分の楽しみから遠ざかってしまうのは勿体無いと思わないかい?」
最後に、人生楽しまなきゃ損さ、と何とも年より臭いけれど私の心の不安を取り除くには充分な一言を告げ、冷めきってしまった紅茶を優雅な所作で口にした。
相変わらず隼兄は、人の奥底に隠れている本心を読み取るのが得意なようで。
彼はこれ以上アンチファンから叩かれるのを怖がっていることや、反対はしたものの本当はお祭りに行きたいという私の本音をあっさりと見抜いて言葉巧みに心のつっかえを取り除いてしまったのである。
もう流石としか言いようがない。
月恋 第165話 「浴衣は帯のせいでお腹が苦しい」→←月恋 第163話 「予想通りである」
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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います！お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します！ (2018年11月5日 18時) (
レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです！ このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています！！ (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫻餅 | 作成日時：2018年4月15日 23時
