月恋 第116話 「役を憑依させる」 ページ22
「それは葵達、ビックリしただろうね」
「ビックリと言うよりも、皆さん若干引いてました」
新さんと映画鑑賞をし、号泣してから翌日のこと。
実家組が寮に戻ってきていたため、学校が終わって直ぐに夜さんとお話をしていた。
内容は主にオーディションの芝居について。だから、昨日の新さんとの出来事を夜さんに話してみたところお腹を押さえて笑われた。
そんなに面白かっただろうか。ただ、主役よりもライバルの方に感情移入をしてしまって、最後はその人の名前を呼びながら二人で大号泣したと言うだけの話である。
何処にも笑う要素が無い筈だが、夜さんは意外と笑いの沸点が低い。だから、何処かツボにはまってしまったのだろう。そう言うことにしておこう。
「それじゃあ、そろそろお芝居の練習をしようか」
「はい、宜しくお願いします!」
ひとしきり笑った後、夜さんは「こほんっ」と１つ咳払いをしてコピーした台本を手に取った。
今日は私も夜さんも仕事が無い。丁度、暇な時間が重なったため、演技の練習をして貰えるよう頼んだのである。
「何処か詰まっている場面はある?」
「えっと、5ページでヒロインがフラれるじゃないですか? その時の‘話を聞いてくれてありがとう。此れからも良かったら友達でいてください’って言う台詞をどう言えば良いか、考えても考えても分からなくて………」
夜さんはペラペラとページを捲り、私が答えた台詞を見つけると指で一文字ずつなぞりながら深く考え込む。
「あー、此処はそうだな………もし、Aちゃんが好きな人にフラれて、此の言葉を言うのならどうやって言うか。それを想像しながら言ってみたらどうかな?」
そしてアドバイスをくれると同時に、優しい笑顔で「一回やってみようか」と言った。
夜さんは芝居のこととなると人が変わる気がする。
今だって、真剣な表情で私の演技について意見を出してくれるし、「一回やってみようか」と言ってから、台詞に目を通した瞬間、ガラリと夜さんの雰囲気が変わった。
ヒロインの相手役に成りきっている証拠だ。
普段は照れてしまう恋愛もののお話なのに、今はそんなことを微量も感じさせないほど自分に役を憑依させている。
何故、こんなことが出来るのか。私は不思議でならなかった。
月恋 第117話 「緑茶と紅茶」→←月恋 第115話 「映画鑑賞」
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櫻餅(プロフ) - 2次元大好き人間！！！さん» コメントありがとうございます。不定期更新ですが頑張ります。これからもこのお話を宜しくお願いします。 (2018年3月21日 12時) (
レス) id: eb7f0e71e0 (このIDを非表示/違反報告)
2次元大好き人間！！！ - 続編おめでとうございます！これからの夢主ちゃんの成長が楽しみですね！！！更新頑張ってください！応援してます！ (2018年3月21日 11時) (レス) id: 6896f5a2c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫻餅 | 作成日時：2018年3月13日 2時
