月恋 第112話 「参考書と小説と証拠」 ページ18
「即刻お帰りください」なんて冷たいことを言ってはいたものの、なんだかんだでAは居座らせてくれる。
今も、「お茶が無くなったみたいですね。お代わり要りますか?」と訪ねて、俺が頼むと答えたえれば、「はいはーい」と軽い返事をしてお茶を淹れ直しに行ってくれた。
「全く素直じゃないやつめ」
そろそろと此方にすり寄ってきたカメレオンでありアイツのペットであるポチ丸さんの頭を軽く撫でながら、お湯が沸く音がするキッチンを眺める。
そしてアイツが席を外しているうちに、キョロキョロと部屋一体を見回す。
例え相手が年下であろうと、女子の部屋を拝めるこの好機をオープンスケベである俺がみすみす逃すわけがない。
年頃の女子にしては落ち着いた部屋で、しっかり整理整頓もされている。あのピンク頭とは大違いだな、と思いつつも再び部屋を眺める。
俺達のCDがずらりと棚に並べられていたり、ポチ丸さんのゲージが意外と大きかったり、勉強机の上に設置されている棚にぎっしりと数学や英語の参考書や問題集が並べられているのには驚かされた。
どの問題集と参考書も付箋が幾つも貼られているし、使い古されてボロボロ。
特に苦手な国語は、他の教科よりもやり込まれている感じがあった。
そしてふと、さっきまでAが読んでいたオーディションの台本へと目が止まる。興味本意で、それを手に取りページをペラリペラリ捲って中身を見てみると、其処にはぎっしりと役作りに関するヒントが書かれていた。
例えば、ヒロインはどういう気持ちでこの台詞を言っているのか、この場面の表情はもっと優しくだとかが書かれていた。
一つ一つの台詞に対しての思い入れが強い。
俺や葵だって、一度舞台に主演として出たことはあるが此処まで台本に書き込みをした覚えはない。勿論、ダブル主演だった陽や夜でもだ。
「思った以上に変なやつ」
Aは思わず言葉に出てくるくらい、良い意味で変なやつだと思う。そして良くも悪くも真っ直ぐで真面目。
普段は俺や恋と悪ふざけしたり、ボケてみたりとそんな態度見せないで、誰も知らないところで努力してる。
本棚に並べられたアイツの苦手な長文小説や、使われ過ぎてボロボロになってしまった参考書たちが良い証拠。
アイドルになるために、一人で東京へやって来るくらい行動力があるうえに努力家とは―――素直にその才能を俺にも分けて欲しいと思った。
努力が出来るって言うのも才能の１つってね。
月恋 第113話 「真面目に不真面目」→←月恋 第111話 「オープンスケベ、ご注意下さい」
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櫻餅(プロフ) - 2次元大好き人間！！！さん» コメントありがとうございます。不定期更新ですが頑張ります。これからもこのお話を宜しくお願いします。 (2018年3月21日 12時) (
レス) id: eb7f0e71e0 (このIDを非表示/違反報告)
2次元大好き人間！！！ - 続編おめでとうございます！これからの夢主ちゃんの成長が楽しみですね！！！更新頑張ってください！応援してます！ (2018年3月21日 11時) (レス) id: 6896f5a2c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫻餅 | 作成日時：2018年3月13日 2時
