月恋 第108話 「ハードルの上げ方」 ページ14
「ああ、そっかそっか。始や隼の会話を聞いて驚いちまったのか」
「はい、少しだけ。紅茶の名前を日常的にはあまり使用しないものですから、びっくりしました」
「だよなー。まあ、春は博識で紅茶にも詳しいし、始と隼は名家のお坊ちゃんだから色々な知識が備わってるんだろうな」
「なるほど」
ちょっと処かかなり浮世離れした隼兄と、庶民とは程遠い上品な雰囲気を醸し出す睦月さん、常識人で博識だけど何処か抜けていて天然な弥生さんの会話を海さんと私の二人でのんびり眺める。
皆のお兄さんであり、割かし何事にも大雑把な海さんの隣が一番落ち着く。
大きなソファの左端から弥生さん、睦月さん、隼兄、海さん、私の順で並んでいる。そして思った。一番端っこで良かった、と。
キラキラとしたアイドルオーラ溢れる人達の間なんかに入ったら、緊張し過ぎて心臓が100個あっても足りないくらいだ。
「そう言えばAちゃん、俺達のことは名前で呼んでくれないの?」
「ゴホッ!」
海さんの隣で大人しく紅茶を飲んでいた時である。今まで隼兄と話していたはずの弥生さんが、突然此方には予想外な話を振ってきた。
急に話し掛けられたせいか驚き、飲んでいた紅茶を吹き出しそうになって噎せ込む。
「おいおい大丈夫か?」
すかさず背中をさすってくれている海さんに、大丈夫と言う意味で頷き、差し出されたティッシュで口元を拭いながら落ち着きを取り戻す。
「すみません、大丈夫です」
「こっちこそごめんね? 驚かせちゃったみたいで………でも、海や隼が俺達の可愛い末っ子に名前で呼んで貰っているのが羨ましくてね。ね、始?」
「なんで俺に振るんだ、春」
「羨ましいって、顔に書いてあるよ?」
「書いてあるわけないだろ全く………だが、海や隼は名前呼びで俺達は名字呼びと言うのは、少し距離を感じる」
確かに睦月さんの言う通り、隼兄や海さん達だけ名前で呼んでいては距離を感じてしまう。
皆さんの名前で呼んでいこうと考えてはいたが、いざ呼んでみるとなると恐れ多くて中々呼ぶことが出来ない。
だが、此処は腹を決めて呼ぶしかない。
此れから一緒に仕事をすることも増えるだろうし、何より一緒に住んでいるのだ。自分から距離を縮めていくのも大切なことである。
「わ、分かりました。じゃあ、此れからは始さん、春さんとお呼びさせて頂きます!」
「あれ、隼みたいに春兄呼びはしてくれないの?」
「一気にハードルを上げないでください!」
月恋 第109話 「顔が赤い」→←月恋 第107話 「紅茶はいかがですか」
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櫻餅(プロフ) - 2次元大好き人間！！！さん» コメントありがとうございます。不定期更新ですが頑張ります。これからもこのお話を宜しくお願いします。 (2018年3月21日 12時) (
レス) id: eb7f0e71e0 (このIDを非表示/違反報告)
2次元大好き人間！！！ - 続編おめでとうございます！これからの夢主ちゃんの成長が楽しみですね！！！更新頑張ってください！応援してます！ (2018年3月21日 11時) (レス) id: 6896f5a2c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫻餅 | 作成日時：2018年3月13日 2時
