誘惑欲張りJEWELRY 『1』 (ページ35)

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黒猫さんと魔王様ページ35

「柏木さんに今度裁縫教えてもらいたいな。」

「いやいやいや、長月さんに教える事は無いと思います。」

　尊敬の眼差しを此方に向けてくる長月さん。そろそろ勘弁してもらいたいし、長月さん、女子力高めで女子より女子らしい貴方に裁縫を教えるだなんて畏れ多い事は遠慮させて貰いたい。

「あっ、ヤマト!」

　突然神無月さんの声が響いたかと思うと、背中にずっしりとした重みを感じ思わず猫背になる。

「みゃーご。」

　耳元から愛くるしい鳴き声がして、ヤマトが私の背中に乗っていることを把握した。

「あの、ヤマト先輩重いっす。」

　私の訴えを華麗に無視し、そのまま頭の上までゆったりと歩く。幾ら私が腰を曲げているからと言っても、何時までも此の体勢を保っているのはキツい。

「みゃおんッ!」

「ぐえッ!」

　頭の上まで来たかと思うと、今度は勢いよく飛び降りて私の膝上へ。そして横に置かれたスクール鞄の中へと潜り込んでしまった。

「え、ちょっと?!」

　困惑しつつ、直ぐ様ヤマトを鞄から出すと口には何と、昨夜徹夜して作った曲のデータが入ったUSBメモリをくわえていた。因みに曲の楽譜はついさっき、マスターコースの寮のゴミ箱へ捨ててしまっている。

「待って、それはダメ!」

　間違えて飲み込んでは一大事だし、まだまだ容量に余裕があるから此れからも使おうとしていたものだ。其れを壊されては堪ったものではない。USBメモリは結構値が張る。

「おや、ヤマト、どうしたんだい?」

　ヤマトはソファにて、優雅なティータイムと洒落込んでいた隼さんの元へ。くわえていたUSBを彼の前で離した。

「ん?これは…………嗚呼、彼女が作った曲が入っているんだね。」

　何故判った………………流石は魔王様としか言いようがない。最早、この人の人間離れした能力に真面目に突っ込んではいけないと悟った。