正論は何も反論できなくなるから悔しい。 ページ27
「全然ダメだ。」
机に叩きつけられ、バラバラに散らばる楽譜達。
「あの、何処がダメなのか教えてもらえませんか―――――黒崎先輩。」
QUARTET NIGHTの先輩方が帰ってきたところで、お芝居の練習は御開き、早速曲作りに取り掛かった。しかし、黒崎先輩に見せた瞬間此の様である。
私が作った曲に対して、良い顔をしない。
「其れくらい、プロになりたきゃ自分で考えろ。」
冷たく言い放たれてしまった。
確かにプロを目指すのならば当然、間違いを自分で気づき、正すくらいしなくてはならない。だが、自分でも気付けない事があるから、其れを教えてもらうためにマスターコースには先輩がつくのだ。
最初から放って置かれては意味が無い。
「1つ言える事がある。」
私の言葉に反応し、ソファに寝転がった状態から起き上がる。そして此方を真剣な眼差しで見詰めた。
「テメェは音楽を愛していない。」
「は?」
彼の一言に私は怪訝そうに眉を潜める。
「好きに決まってるじゃないですか、音楽。好きじゃなかったら作曲家なんて目指してませんよ。」
「其の言い方からして好きじゃないと言ってる様なもんだろ。
本当に音楽が好きで曲を作ってる人間は、作曲家'なんて'っていう言い方はしねェ。」
黒崎先輩が言っている事を否定したくても、それ以上声が、言葉が出てこなかった。
ヒヤリとやけに冷たい汗が私の背筋を凍らせる。
黒崎先輩が言っている事は正しかった。だから反論の仕様がない。今、下手に何かを口にしてみろ。もっと正論を言われて自分が苦しくなるだけだ。
「お前より、アイツの方が最高にロックな曲を作れる。好きでも無い仕事なら辞めちまえ。お前には音楽の才能はねェ。」
'アイツ'とは七海先輩の事だ。
何時も黒崎先輩の辛口にフォローを入れてくる寿先輩も、今日は静かにその場で険しい表情を浮かべて私と黒崎先輩の言い合いを見ているだけ。
寿先輩が黙っている、と言うことは彼も黒崎先輩と同じ考えなのだろう。
「音楽の才能の事に関しては、今現在、アイドルとして伸び悩んでいる先輩方に言われたくありません!」
カァッと頭に血が昇り、やけくそになって言うつもりの無かった言葉を言い放つ。
そして「今日は此れで失礼します」と、散らばった楽譜を拾い上げ、没になってしまったならばもう要らないとゴミ箱へ捨てて帰った。
――本当に音楽が好きな作曲家は、こんな風に楽譜をゴミ箱に捨てたりなんかしない。
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年5月29日 10時