寝坊 ページ19
「ぎゃぁぁぁっ、寝坊した!」
翌朝、サンライズ・レジデンスの3階にて、私の悲痛なる叫び声が響き渡った。
目が覚めると、私はTシャツに短パンの完全OFFモードで、勉強机に突っ伏し、パソコンを起動させたまま眠ってしまっていたのである。しかし、昨日の夜3時頃までは起きていた筈なのに、そこからもう既に記憶がない。
慌ててパソコンを確認、もう新曲は作り終わっていた。
きっと作り終わったと同時に、力尽きてそのまま眠ってしまったのだろう。
時計は午前8時を示している。果たして、間に合うのだろうか。
朝食も食べず、私は着替えて学校まで全力疾走。
道行く人々に、哀れむような目で見られるが気にしない。道端で呑気に眠る隙だらけな猫の尻尾を踏んでしまい、足を引っ掻かれた気もするが、今はそれどころじゃない。
遅刻だけは死守せねば、私の作曲家活動は終わったも同然。
私の通う「私立薄桜学園」の鬼教頭である土方歳三先生に、芸能活動は許可するがそれによって学業に支障が出るようであれば、保護者と此方からよく相談させてもらう。と口を酸っぱくして言われているのだ。
こんな事、あの右京君に知れたら、絶対に辞めさせられてしまうではないか。
それだけはどうしても免れたい私は、息を切らし、桜並木の綺麗な道を駆ける。
私が走る度に、地面に広がった桃色の桜の欠片がふわりと舞い上がる。そんな美しい光景をのんびり眺めながら登校できないのが、非情に残念でならなかった。
「ラストスパート!」
校門が見えてきたと同時に、私は更に急ぐ足を速めたのであった。
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年5月29日 10時