【ツキウタ。】 月に恋せよ暦ガール

月恋 第17話　「細腕と携帯のアラーム」 ページ18

ピピピピピッとけたたましく鳴り響く、聞き覚えの無い携帯のアラーム音とカーテンから差す陽の光りの眩しさに目を覚ます。

「んー……もう、あさ?」

　寝ぼけ眼を軽く右手で擦りつつ、朝から元気に歌う携帯を黙らせる。そしてモソモソと程好い暖かさの布団から這い出ると、見覚えの無い部屋に私は居た。

　何故私は此処に居るのか否、眠っていたのか昨夜の記憶をグルグル巡る。

　昨日の夜、長月さんの美味しい夕食を食べ、自分の胃袋と舌を満足させて上機嫌で風呂に入った。そして風呂上がりの水を飲みに行くと、同じく風呂上がりであった水無月さんに遭遇。

　水無月さんはピアノが弾けると聞き、私も亡き母の影響でバイオリンが弾けると言う話をし、お互い盛り上がって、プロセラの共有ルームで話し込んでいた筈であるが、その後の意識と記憶が全く以て無い。

　単純に一緒に居た水無月さんが此処まで運んできてくれたと考えられるが、彼の細腕で私を持ち上げる姿が想像できない。と言う事は誰か他の人だろうか?どちらにせよ、お礼を言わねばならぬ。

と思いつつ、着替えを済ませて取り敢えずプロセラの共有ルームへ。

「おはようございます」

「おはよう、早いんだね」

　プロセラの共有ルームにひょっこり顔を出すと、もう既にエプロンを身に付けた長月さんがキッチンに立っていた。

「朝ご飯ですか?お手伝いします!」

「ありがとう。じゃあ、味噌汁に入れるお豆腐切ってくれるかな?包丁は手を切らないよう、使う時は気を付けてね」

　そう言ってニッコリ笑う姿はお兄ちゃんではなく、最早お母さんのようだ。

「はーい」

　返事をしつつ、冷蔵庫からお豆腐を取り出して手際よく切っていく。

「手慣れてるね。家でも料理してたの?」

「はい、家事全般は私の仕事でしたから」

　うちでは自分の事は自分でやるが家訓の1つの様なものであり、お抱え運転手は雇っても、お手伝いさんは雇わず、家事の全ては私がやっていたから、此のくらい朝飯前である。

「そっか、じゃあ今度からお手伝いしてもらおうかな?」

「任せてください!」

月恋 第18話　「勝ち誇った笑み」→←月恋 第16話　「生存確認」

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す