不覚にも…… ページ39
唐揚げを作って、お酒やらジュースを開けてわいわい騒ぐ三十路近い大人たち(武内くんと鈴木くんは除く)を見て思ったことがある。
この人たちは男子大学生だったっけ?と。
幾つになっても少年の心を忘れないのは良いことであるが、さすがについていけなかった。
帰りたい、とひたすら思いながらジュースをちびちび飲んでいく。
まだまだ未成年の私はお酒の味を知らないけれど、皆さんが美味しそうに飲んでいるため少し気になっている。
成人したら、久野ちゃんと一緒に飲みたいなぁ……。
「ミケ姉さんもジュースちゃんと飲んでる!?」
「うん」
みんなで集まれて嬉しいのか、いつもよりもテンション高めな武内くん。お酒の力も相まってか、普段以上に饒舌だ。
やたら話しかけてくる武内くんを適当にあしらいながら、さきほど買ってもらったお菓子のオマケを開けて中身を確認した。
「あ、しのぶさんだ」
1発でしのぶさんが当たるとは、今日の私は運が良いらしい。そして、その次に出てきたのはカナヲちゃんと禰豆子ちゃん。なかなかの神引きである。
思わぬ収穫にほくほくしつつ、酔っぱらって江口家の観葉植物を噛みちぎって遊びだした花江さんの飲み物をお酒から水にこっそり取り替えて。
床で眠ってしまっている内田さんと斉藤さんに毛布を軽くかけて、散らかったゴミと食器をささっと片付けてから私は席を立った。
「そろそろお暇させていただきますね」
充分、食べて飲んで。私にしてはよく話した方である。そろそろ帰っても文句はないだろう。
「送ってくけど」
「いえ、大丈夫です」
「でも、女の子ひとりじゃ危ないよ?」
「本当に大丈夫だよ……それでは、お邪魔しました」
自分の家を知られたくないが故に、梅原さんと榎木くんの申し出を丁重にお断りしてから江口家を後にした。そして、街灯の明かりを頼りに1人で歩く帰り道。
ふと、思ったことがある。
公表はしていないが私の母親は亡くなっており、父親とはほぼ絶縁状態だ。だから、いつも夕飯は久野ちゃんと2人で食べるか、1人で食べるかのどちらかであった。
もちろん、久野ちゃんと食べるご飯はとても楽しい。だが最近、鈴木くんや武内くんともご飯を食べることが増えて。そして今日、久しぶりに賑やかな人達に囲まれながら夕飯を食べて。
不覚にも、ちょっと楽しいなと思ってしまった自分がいたのであった。
「ま、たまにはいいか」
本当にたまになら、こういうのも悪くないかもしれない。
番外編 11月11日は何の日?→←最推しはだーれだ☆2 ※大幅に変更しました。(鬼滅の刃単行本のネタバレ有り)
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リンリン(プロフ) - オチは1番か3番希望です (2022年5月19日 16時) (レス) @page46 id: 68dd5d6199 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - アカリさん» かしこまりました。少々お待ちいただけると嬉しいです。 (2021年12月18日 12時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - ジェラートさん» ありがとうございます。参考にさせていただきます。 (2021年12月18日 12時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
アカリ(プロフ) - 石i川i界i人さんとの絡みが見たいです (2021年12月11日 13時) (レス) id: 2ff7c7d1e3 (このIDを非表示/違反報告)
ジェラート(プロフ) - オチは2希望です (2021年12月5日 21時) (レス) id: 9bd892b1c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2021年10月18日 9時