仮面7 ページ9
「そういえば、此れ後幾つ位作るんですか?」
「んー、120個位かな。」
「え、そんなに?!」
手を休めず、ひたすら檸檬爆弾を作っていると流石に手が疲れてくる。そして集中力も途切れ、段々睡魔が私を襲ってくようになった頃―
「おい梶井、一寸邪魔するぞ。」
ノック音と共に、突然中原さんがやって来た。
「ひっ。」
私は小さな悲鳴をあげ、近くにあった檸檬爆弾が入れてある大きな箱の死角に隠れた。
今まで油断していたが、よくよく考えてみれば梶井さんは中原さんの部下。部屋に訪れることは珍しく無い筈なのだ。
ちょくちょくポートマフィアの拠点に来ては梶井さんとお喋りしたり、黒蜥蜴の立原道造君や銀ちゃん、其の上司の樋口一葉さんをからかって遊んでいたり、事務仕事を手伝ったりしている事がバレたら確実に怒られる。
其れだけは御免だ。中原さん、ポートマフィア幹部だけあって、怒ると凄く怖そうだからである。
見つからないように息を殺し潜める。
「梶井、手前今日好い香りするな。」
「そうですか?」
中原さんは梶井さんに書類を渡しつつ、首を傾げる。
「嗚呼、お香の好い匂いだ。」
あ、判った。其れ多分私だ。
よく銀ちゃんや立原くん、樋口さんにお香の匂いがする、と云われる。自覚がないから判らない。
だが、梶井さんも其れを判っていたようで、冷や汗だらだらで、私の隠れた方をチラッと見てくる。どう誤魔化そうか考えてくれているが、中々善い言い訳が見つからないと云う顔だ。
「うちの嫁も此れとそっくりな香りがする。」
中原さんがぼそりと呟いた。
すみませんねえ、お香くさくて。でも前の職が長くて、着物とかに染み付いちゃってるから、仕方無いじゃないですか。
「そ、そ、そうなんですか!さ、最近、お、おお、奧さんとはどんな感じで?」
梶井さん、挙動不審すぎだ。そして、其の話題は自ら墓穴を掘りに行っているようなものだ。
だが此れは此れで、中原さんの本音が聴けかもしれない。
ごくりと唾を飲み込み、中原さんの声に耳を傾ける。
「………まあ、其れなりには仲良くやってるよ。」
少しの間があったが、中原さんはフッと微笑んだ。
虚偽つき、全然仲良くなんて無いじゃないですか。
まともに言葉を交わしたのなんて、昨日が始めてで、仲が好いとは決して云えないのに。
其れに私の前ではいっつも無愛想で、そんな優しい笑顔、私は1度も見たこと無いんですよ………
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座敷わらし(プロフ) - 夕霧さん» 有り難う御座います! (2017年7月25日 20時) (レス) id: 3af3fdf8cd (このIDを非表示/違反報告)
夕霧(プロフ) - とても面白いですね! 更新楽しみにしています! (2017年7月23日 1時) (レス) id: fb8453ace7 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - きせつふう。さん» ありがとうございます!中々更新できていませんが、頑張ります! (2017年5月29日 22時) (レス) id: 087f4a5487 (このIDを非表示/違反報告)
きせつふう。(プロフ) - 続き気になります.....!更新待ってます!とっても面白いので頑張って下さい! (2017年5月26日 20時) (レス) id: 1841832f9e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 椿さん» 有り難う御座います! (2017年5月12日 19時) (レス) id: e75982502b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年4月20日 18時