仮面夫婦

仮面６ ページ8

「聞いてください梶井さん、昨日は少しだけど中原さんと喋ることができたんですよ!」

　次の日、キャッキャッとはしゃぎながら昨夜の事を話しているのは、中原さんの部下でありマッドサイエンティスト、梶井基次郎さんである。

　此所に来て少し否、かなり変わっているが初めて本音で話せる友人のような、お兄さんの様な人だ。

「其れは善かった。」

　梶井さんは私の話をにこやかに聞き乍ら、自家製檸檬爆弾を手内職で大量生産中である。私も其れを手伝う。

「処で、毎回此所に来ていることは中原幹部は知っているのかい?」

「え?云ってませんよ。」

　私でも出来る事務仕事を手伝っていることや、梶井さんや「黒蜥蜴」の皆さんと仲が好い事は中原さんには何一つ伝えていないのである。

「ま、不味いですかね?」

「どうだろうか。」

　梶井さんは、檸檬爆弾を作り乍ら考えるも、

「……………………判らん!」

其の一言で凡てを片付けた。

「其れよりも此の檸檬、上手く出来たと思わないかい?!」

「あ、本当だ、何時もより綺麗! でも、私の方も負けてませんよ!」

　そして、二人して考えるのを放棄し、檸檬爆弾生産に力を注いだのである。


所謂、現実逃避と云うヤツだ。

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