仮面9 ページ11
翌日、珍しく中原さんは家に居て、然も起きていた。
「お、御早う御座います。」
何時もなら、仕事に行っているか、眠っているかなのに、珍しいことも有るものだと驚いた。
明日は雨かな、等と失礼な事を考えてしまうくらいには………
「嗚呼、おはよ。早速でわりぃが、此れ着て出掛けるぞ。」
「はい?」
手渡されたのは、赤いお洒落なワンピースであった。
突然、渡されて私は思わず頚を傾げるも中原さんは説明する間もなくさっさと玄関へ。
否、説明くらいしてくださいよ。と内心毒づくも、本人に其れを直接伝える程の勇気は生憎持ち合わせていない。
何も聞かされずに、云われるがままに着替えると―――
「行くぞ。」
とたった一言、ぶっきらぼうに云い放って玄関の黒い扉を開けて外に出て行った。
私は其の言葉通り白いカーティガンを羽織り、黒いヒールを履き、中原さんの車に乗り込んだ。
「急で悪いが、此れから首領と俺とエリス嬢と出掛けてもらう。」
エリス嬢とは、首領が溺愛している非常に愛くるしい幼女の事である。
綺麗な
中原さんとのお見合いの時に、首領の隣に居たから知っているし、拠点に行く度に遊んでとせがまれ、云われるがままに相手をしている為、かなり仲が好い。
「わ、判りました………そ、其れにしても本当に急ですね。」
何か話題をと思い、静まり返った車内でそう云うと、
「嗚呼、エリス嬢が手前と一緒じゃねえと、買い物には行かないッて云ったらしくてな。
手前、何時の間にエリス嬢とそんなに仲好くなったんだ?」
物凄く不思議そうな顔で此方に聞いてきた。
何で偶にしか拠点に行ってないのに、エリス嬢にそんなに気に入られているんだ。と云いたそうな表情だ。
話題の方向性を間違えたな、と私は今更激しく後悔した。
一から説明するのも億劫だ。
「偶に弾いていた三味線が随分お気に召されたようで、拠点に行く度に、エリス嬢に会って弾いているんです。」
三味線をエリス嬢が気に入ったのは虚偽ではない。事実である。
苦しい云い訳をしつつ、私達は首領に指定された場所に向かったのだった。
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座敷わらし(プロフ) - 夕霧さん» 有り難う御座います! (2017年7月25日 20時) (レス) id: 3af3fdf8cd (このIDを非表示/違反報告)
夕霧(プロフ) - とても面白いですね! 更新楽しみにしています! (2017年7月23日 1時) (レス) id: fb8453ace7 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - きせつふう。さん» ありがとうございます!中々更新できていませんが、頑張ります! (2017年5月29日 22時) (レス) id: 087f4a5487 (このIDを非表示/違反報告)
きせつふう。(プロフ) - 続き気になります.....!更新待ってます!とっても面白いので頑張って下さい! (2017年5月26日 20時) (レス) id: 1841832f9e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 椿さん» 有り難う御座います! (2017年5月12日 19時) (レス) id: e75982502b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年4月20日 18時