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東山先生にお弟子さんが対応しているのをちらりと見てから従業員が案内してくれたのは控室の一角。
「大倉、ほんまに申し訳ない。」
焦った表情の横山くんに荷物を早々に渡すとすぐに職人さんの手に渡り作業が継続されていくのが見えたから俺の役目は無事完了したって安堵。
「助かった。」
横山くんの言葉を聞いてから小さい声で俺はマルちゃんのブツクサを伝えると苦笑いしてきたのを見ると、やっぱり嫌ではないと思うんやけど。
ちがうのか?
「マルはもう無理やって分かっていたん。ヒナもヤスも頼れるかもしれんって思うたんやけど、無理やって言われてな。大倉しかおらんになって……ほんまにごめんな。」
「別に大丈夫ですって。バス来なくて結構暇していたんで。」
「そんなに雨が?」
「俺の住んでいるルートは雨が降ったら渋滞なる場所やから。」
横山くんは申し訳なさそうに矢継ぎ早に言い始める。
「あの辺りはそうやな。」
「大倉がおってくれてよかった。」
「ほんまは自分らで何とか出来たらよかったんだけど、社長が店休はしない言うし。」
「昔からの職人もいい顔はしない。」
「分かっておるん、自分たちの容量は決まっておるのにそれ以上の仕事をすればいいモノを作れなくなることも。」
「でも、名前が売れる事は大事やって思うん。」
四代目の意見は絶対なのは仕方ない。
でも、こういう時ってそう言う問題抜きで協力……なんて思うけど、老舗ならではの悩みの一つなんかもしれへんな。
「役に立てて良かった。」
なんて言うた時やった。
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背後のドアが開くと同時に聞き覚えのある声が聞こえたと同時に横山くんは頭を下げた。
「これは東山先生。」
「横山さんにはわがまま言い大変申し訳なく……」
振り返る気なんてならず俺は背を向けたまま少しずれていく。
視線に入らないようにと言う気遣いと言えば聞こえがええけど、実際は違う。視線に入りたくないって言うのが一番大きい。距離を取って邪魔しないように、これも店で覚えた気配を消しての移動。
ドアを静かに開けて外に出た時に一番のトラップがここに用意されているなんて思いもしなかった。
数人の人がそこにいて
視線を背ける人と誰だ、お前は?そんな視線の人
二つに分かれる。
この場に似つかわしくないジャージと言う姿でこんな場所から出てきたらそりゃ誰だってそう思うに違いない。
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瀬奈(プロフ) - 猫さま コメントありがとうございます。g_t_165です。頻繁には更新してはいませんがこちらになります。申請してくださいね。 (2022年6月27日 17時) (レス) id: 070125caaa (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - はじめまして いつも作品をありがとうございます 失礼ですがTwitterのユーザーを教えてもらえないでしょうか? 急にすみません😢⤵️⤵️ (2022年6月26日 19時) (レス) id: 537de6aadb (このIDを非表示/違反報告)
瀬奈(プロフ) - ショーン様 コメントありがとうございます。ワクワク・・・そ、そんな恐れ多い。これからも楽しんでいただけるようにがんばります。 (2022年6月12日 11時) (レス) id: 070125caaa (このIDを非表示/違反報告)
ショーン(プロフ) - 更新ありがとうございます。もうもう更新の音がするたびワクワクが止まりません。 (2022年5月20日 19時) (レス) @page16 id: 849d9c80b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀬奈 | 作成日時:2022年4月26日 15時