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「大倉!」


ヤスに声をかけられ視線を向ける



声には出せへんけどヤスの隣にいる人を見て固まった。





「大倉に紹介するな。さっき話題に上がっていた人。」




「なんで僕の話が話題に上がるんです?」



「人見知りの酷い男って。」



「それは否めませんけど。」




「そうやん、今も少し距離保ちながら大倉の顔を見てるやん。」




「章ちゃんのその距離感が凄いんですって。」




マスクしているけど眼鏡かけているけど絶対この人は……







「先生?」






俺の言葉にヤスの隣にいる人は俺をじっと見てくる。






「そうそう、先生。」




「先生ちゃいますから。」




「そうやん、先生やん。」




「その言い方が苦手なんですって。」






少し照れて俯いて言う話し方、店に来た先生だよ、うん、そうだ。







店の客とこうして会うってなんか嫌やな。







ゆゆちゃんでない大倉だと何を話せばいいか分からへん。









いや、そもそもゆゆちゃんイコール大倉になったらあかんねん。女装して非現実的なものを見せる世界だから絶対イコールにしたらあかんって言うのが店長の考えやし。








「ヤスの言ってた飯屋で知り合った先生?」








念を押すように言うのは間違えないように、知りませんよ俺はを言うためな行動。







「そうそう、ラーメン屋で知り合った。」








申し訳なさそうに会釈してから「初めまして。」そう言う言葉にちょっとドキドキする。
なんで、ドキドキする?







「飯誘ったのに『仕事が大変』言うてて出て大丈夫なん?」






「息抜き兼ねて資料集めしてまして。」





「編集部の人に頼めばええやん。」




「それが苦手で。」






ほんまに人見知りっぽいな。







客で作家さんおるけど、編集部に頼みまくっているって豪語しているけど作家さんじゃないのか?




「今回は何を調べているん?」



ヤスは先生の持っている本を代わりに持ってあげたりしているなんか優しいんだけど。




「ちょっとした話です。スランプ中でなかなかできなくて。」





困った顔をして言う感じからして結構大変な仕事なんだなって思う。いや、どんな仕事も大変なんだって思うけど。
二人のやり取りを見ながら俺は黙っているとヤスは思い出したように突然言ったんよ。







「マルも大変やん。なんなら、暇人の大倉つかわへん?」





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作者名:瀬奈 | 作成日時:2021年3月23日 16時

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