検索窓
今日:55 hit、昨日:2 hit、合計:39,570 hit

26 ページ26

.

「考えたら、お宅って撮る側やなくて撮られる側の顔してるよな。」



入り口で聞こえた声に俺は顔を上げると紙コップを持って上半身脱いでいて完全にラフな人がそこにいた。



「すいません、さっきは。」





深々と頭を下げると彼は大笑いしてから「ええって。」なんて言う。嚙みついてこないし、短気ではないし、意外に優しいのに驚いた。




「取られる側とは?」





突然そんなことを言われたから思わず口にすると彼は俺を指さして言う。




「あんたが。」




「俺?いえいえ、そんなことないですって。」



「そうか?」






不思議な事を言う人だなって思うて俺はカメラをテーブルに置くと彼はズカズカと俺の傍に来てもう一度言う。





「撮られる側やん。」






もう一度言う言葉に……俺は視線を反らす。





「褒めすぎですって。」




「そっかな。」




あっさり言うて彼は紙コップをテーブルに置いてからパイプ椅子に座った。



「なんで隆平の?」



「なんで?」




「そりゃ、弟として気になるやん。」





金に目がくらみ家の事してますはここで言うたら危険やって言うのくらい俺は分かるんやけど、康人のこと言うても大丈夫なんか?突然怒鳴ったりしない?噛みついてこない?心臓バクバクしながら俺はボソッと言う。






「話の流れで頼まれました。」



「あぁ?話の流れ?」



怖い怖い、急に噛みついてきそうな口調やん。




「共通の友人がいまして、そいつが俺が昼間暇しているから手伝いをってそれだけです。」




「ほんまか?」




「ほんまですって。それに、夜の仕事しているんで週3日の3時間弱で掃除洗濯飯を準備してますか
ら。」





信じろって念を送りながら言うと「飯?」って反応が来た。




「飯です。」


「ゆで卵は?」


「ゆでてます。」


「こないだ家にあったひじきご飯は?」



「あれは俺が作りました。」



「豚の生姜焼きは?」



「それも俺が作りました。」




「……餌付け?」




「ちゃいますから。先生の希望したのを作ってるだけです。」





いや、その前に……先生の家に入り浸ってんの、この人は。




「そっか。」






納得された、一応大丈夫よな。なんて思いながらいるとアナウンスが入る。







.

27→←25



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (44 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
112人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:瀬奈 | 作成日時:2021年3月23日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。