冬の刻-4 ページ14
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眉間に皺をよせじっと見てくる男は武士には見えなければその辺の民にも見えない。身なりはきちんとしているからどこかの位の高い人か?
「用件は?」
「書庫に会った手紙を見てここに来れば何か分かるかと思い来た次第で。」
「手紙?」
怪訝そうな表情でこちらを見てくるから俺は素直に答えた。
「手紙の主に会いたくてここまで来た。俺は代理やけど。」
じろじろとこちらを見てから彼は「なるほどね。」と口にしてから馬の額を撫ではじめる。
「皇子のご命令で来たんか?」
「はい?」
「だから皇子に頼まれてきたんやろ?」
「俺は口に……」
「顔に書いてある。」
急に言われた言葉に俺は思わず両頬を押さえると大笑いして彼は言う。
「おもろいな、都でもそう言う行動する人はいるんやな。公家の兄ちゃんは頼まれてきたって事か……だってよ、りゅう!どうせ見てんだろ?」
急に空に向かってそう言う彼を見て同じように見上げてみるけど何もない、いたって普通の木々に囲まれていて何をしているのか俺には分らなかった。風もないのに木々がざわめきまるで何かを知っているかのような動きを彼は見てから「お前さ、後ろずれろ。」なんて急に言われて俺は素直にずれると、彼は俺の前にひらりと座って手綱を手にした。
「い、いきなり?」
「しっかり捕まえてろ。」
そう言い彼は俺が持っていた手綱を手にして馬を走らせた。
あまりの早さに目を瞑る。
肌に触れる風の当たり具合からしてそんなに馬を走らせることなんて無理な山道で……そう思った時だった。
音を立て抜けたのが分かり俺は目を開けると声が出なくなる。
「急がせたな。」
馬をいたわる彼の後ろで俺は周りを見渡す。
寒々しい冬の空気はそこにはない。
同じ日差しなのにここは暖かく居心地がとてもいい。彼は馬から降りて手綱を引きながら休める場所に来ると俺も同じように馬から降りる。さっきまでの土と違い柔らかく手入れのされたこの場所は同じ山に思えない。彼は走って東屋のドアを開けて言う。
「りゅう、連れてきたで。」
ふらりと出て来た男を見て俺は……声が出なかった。
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瀬奈(プロフ) - ミムラ様コメントありがとうございます。月詠記はあのまま置くのが一番と思い置かせていただきます。こちらは新たに書き足して進めていきますのでこれからも宜しくお願い致します。 (2020年6月13日 16時) (レス) id: d70537b0b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミムラ(プロフ) - よかったです。世界観、書き表し方とても好きです。何度も読み返してます。消さないでほしいです。次も楽しみにしています。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 39731cc6b3 (このIDを非表示/違反報告)
瀬奈(プロフ) - kkoyanagi様 コメントありがとうございます。前のお話をもっともっと向き合いたくて、まずは最初から書いてます。ゆっくりあのお話に繋げていきますのでお待ちくださいね。 (2020年3月9日 20時) (レス) id: d24f83f6f0 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - 良かった、前のお話凄く気になっててどうなるんかなぁって心配でした。有り難うございますゆっくり待ちます。 (2020年3月9日 7時) (レス) id: 46c9530258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀬奈 | 作成日時:2020年3月3日 18時