それでも君は ページ27
伏見と会う話も含め話し終えた後
少しばかり
バー内には重苦しい空気が流れた
「…キングは面倒だって言ったけど
もしも
俺の存在そのものが吠舞羅にとって脅威になる時が来たら
ちゃんと消してもらうから。
もちろん
裏切り者って言うなら、今すぐ出て行くけどね」
肩を竦めた紫城に
十束が思わず口を開こうとしたその瞬間
「裏切り者なわけねえだろ！」
驚いた様に瞳を瞬かせたのは紫城で
その視線は怒鳴った八田へ向けられた
「お前はいつも
何も話さないくせに
勝手に1人で完結して
それでいいって
なんで、誰にも相談しなかった」
「…信用はしてた。
信頼してなかっただけ。
話すのが怖くて逃げて
我儘な子供でいたかった。
でももうその責任から逃れられない。
俺の存在そのものが今、危険視されてる」
「…話してくれたのは信頼しようと思ったからだろ。
お前はいつだって仲間を見てた。
あいつのことだって…
だから
お前が不安に思うことあるなら
全部
俺達だって一緒に背負う。
それが、仲間だろ」
ほら、八田は純粋だ
その真っ直ぐな瞳が苦手だったのは嘘ではないし
今だって苦手かもしれない
それでも紫城はそれに救われるのだ
「Aの料理、草薙さんに負けず劣らず美味いしな」
「食べ歩きすると美味そうに食ってくれるし」
「頼りになるしよ」
だからここにいていいと
そう口々に言われて、らしくもなく泣きそうになったのは秘密だ
「紫城には、俺の補佐っちゅー仕事もあるしな」
「シジョウといると、ミコトとは違う安心感があるから」
「良識あるAがいると草薙さんも後処理助かるって言うし
俺も、Aとまだやりたいことたくさんあるよ」
初めから話していたらなんて
そんな勇気はなかったけれど
時間はかかったけれど、きっとこれで良かったのだ
だから
「十束」
これもきっと、話さなくてはならない
いつも通りの賑やかさに戻ると
紫城は手招きして十束1人をバーの裏口に呼び出した
「どうしたの？」
「俺、さっき話してないことある」
「そうなの？」
「来年の冬の夜、正確な日はわからないけど
お前は死ぬ。
その時
多分俺は、能力を自由に扱えるようになると思う」
「…そっか」
ただいつもより少しだけ寂しげに、十束はそう笑っただけだった
その言葉を噛み締めるように
絶対に守るから、なんて無責任な言葉は紡げなかった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 199人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鍵宮 | 作成日時：2019年7月9日 19時
