それは強さと呼ばない ページ17
放たれる銃弾は
紫城の掠めることさえなかった
避けているか
炎で相殺されるか
リーダー格であろう男の横面を蹴り飛ばした紫城が
そのままその頭を踏みつけた
「お前?
十束を殺せって指示したの」
「ぐ…」
「1回痛い目見てわかんないなら
もう、どうしようもないよな?」
氷点下の声に背筋が凍る
底知れぬ恐怖に奥歯がカチカチと音を立てた
助けてくれ、と命乞いさえさせてくれない
圧倒的な力を持つ少年は
炎で宙を駆け
銃弾を弾いただけで
その炎を攻撃には使わずして
圧倒したのだ
「まあ、死なないとは思うけど
死んだらごめんね?」
にこりと笑い部屋をあとにする紫城
部屋の中には小さな赤い球体が取り残され
扉が閉まって数分
「簡単には死なせてやらないよ」
パチンと指を鳴らした紫城の背後で
扉が吹き飛ぶ程の爆発が起きた
たらりと腕から流れた血に
紫城は苦笑を零した
「またアンナに怒られちゃう」
紫城がバーに戻ると
外で待っていたらしいエリックと藤島
エリックは謝罪をしたけれど
紫城は声をかけたのは自分だと笑って返した
そして
仲間になったエリックを歓迎したのだ
「てか、うわっ…藤島ごめん。
さすがにこれは痛いだろ」
「エリックの通話は聞いてたし
Aから見ておくようにも言われてたからな。
これくらい平気だ」
「明日ちゃんと病院行ってね」
エリックと十束の間に入り
ナイフを握った血だらけの手を痛々しそうに見つめ
紫城は謝罪する
止血してあっても痛そうである
「Aは
組1つ潰したって言うのに、涼しい顔してるね」
「十束…」
「…少し話そうか」
ああ、嫌だと紫城は唇を噛み締めた
どうして十束は気づくのだろう
どうして見逃してくれないのだろう
エリックと藤島をバーの中へ入る様伝えた十束は
少しだけバーから離れた場所で紫城の腕に包帯を巻き付ける
「1人で戦えること。
Aのそれは、強さじゃない」
「……」
「エリックのことを言わなかったのも
証拠が欲しかったのは本当だろうけど、本音は別だ。
組を潰しに行ったのも、けじめじゃない。
組を潰したかったのは
暴発を防ぐのに、1度どこかで思い切り炎を使っておきたかったからだ。
ギリギリまでエリックのことを言わなかったのは
人に言うほどの自信がなかったからだ。
もう1度言うよ。
Aのそれは、強さじゃない」
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作者名:鍵宮 | 作成日時:2019年7月9日 19時