氷川組 ページ16
「エリックがウチに潰されたヤクザの残党ねぇ…」
《残党というか
脅されて使われた鉄砲玉だね》
「それ、エリックがお前に白状して相談してきたわけか」
《うん》
十束が電話で草薙の事のあらましを話していると
あっけらかんとしたその答えに、草薙は髪を掻いた
思わずため息がこぼれた
「まあ事情はわかっとった。
とりあえず、エリックは連れて帰り」
《え?》
「お前が殺されかけるんも
エリックの素性も。
聞いとったで」
《…そう、なんだ》
誰に、と聞かずとも十束はわかっていた
とにかく帰ってくるようにと伝え、草薙が通話を切る
エリックの処分は周防の気分次第だ
「で、どないする?」
「今回はあいつの好きにさせるって話で収まっただろ」
「…せやけど、ほんまに平気かいな」
「けじめをつけたいんだろ」
それは数分前の話だ
紫城はバーに草薙と周防以外がいないことを確認すると
エリックの素性について語った
『エリックは氷川組の飼い犬です。
さっき2階へ上がったのも、キングを殺すよう命令を受けて。
けどそれが無理なら狙われるのは
アンナか十束になる。
でもさすがに、アンナはないだろうから十束が狙われます。
藤島あたりが止めに入ってくれるだろうし
エリックも十束を殺せはしないと思うから。
でも
俺が引き入れた危険因子なのは変わりない。
わかってて、今日まで誰にも言わなかったのも良くない』
『…黙っとった理由が、あるんか?』
『決定的な証拠が欲しかったんです。
でも
だから、俺がちゃんとけじめをつけます』
周防1人の方が早かっただろう
その方が周防としても、鬱憤を発散されるいい機会になっただろう
それでもそれをしなかったのは
紫城が纏う殺気と
その有無を言わせぬ口調からだった
周防はおそらくわかっていた
紫城のけじめが建前であることを
「吠舞羅に用があったのはあんた達?」
地下にその声が響いた時
誰1人としてその気配に気づかなかった
慌てた様子で立ち上がり
戦闘態勢に入った彼らは、入口に立つ少年に瞳を瞬かせた
「は、ははっ…ガキ1人で何が出来るんだ」
周防ではなく
少年1人の登場に安堵もしたし、強気に出ることも出来たのだろう
「1人だから、何だってできるんだよ」
その声は冷たく
鋭く
彼らは悲鳴をあげる時間さえ与えられなかった
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作者名:鍵宮 | 作成日時:2019年7月9日 19時