イロコイ・ライン 5th【ars K.N】 (ページ33)

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193.PARKING。ページ33

私の家に帰る道とは、違う道。

見慣れない景色が、窓の外を流れて行く。

「先生のお家は...近いんですか？」
「近いって、どこから？」
「あっ！えっと、じゃあ学校から」
「アハッ、学校かよ。学校からは、30分位かな。電車で」
「そうなんだ...」

これから先生が住んでる町に行くんだと思ったら、それだけでドキドキして。

チラっと先生を見ると、当然だけど慣れた風に自分ちを目指してて余計にドキドキした。

でも車が停まったのは、マンションの駐車場とかじゃ無くて月極めの駐車場。

家に帰るんじゃなかったのかな...って思ってると「うちのマンション、駐車場少なくてさ」ってエンジンを切りながら先生がぼやくように言った。

「誰かが車と一緒に出て行くまでは、ここに停めててくれって大家さんに言われてんの」
「そうなんですか」
「不便だろー？その代わり、駐車場代は安くしてくれてるけど」

ウヒヒ、って笑う先生はちょっと嬉しそう。
倹約家なのかな。

先生が運転席を出るのを、私は車の中から見送る。

先生んち、どっちなのかな？
駐車場から外観なら見れる！って楽しみにしてたから、ちょっと残念。

「何してんの？」
「え？」

助手席のドアが開いて、先生が上半身を突っ込んで来た。

「あ...私は待ってたら良いんですよね？」
「いやいや。こんな所に女の子一人置いて行けるかるか、バカ」
「バカ...」
「早く出ておいで」

グイっと手首を引っ張られて、車の外に出される。

「マンション、ここから3分位だから」
「あの...」
「ま、すぐそこよ」

手首を掴んでた先生の手が、掌まで下りて来てキュっと握られた。
手を繋いで、知らない町を歩く。

「あの、先生」
「ん？」
「お家...」
「うん」
「私も行くんですか...？」

先生の視線が、私に向く。

「あ。もしかして、警戒してる？」

あんまり笑ってない。

「怖いなら、玄関の外で待ってたら良いから」

でも、次の瞬間にはもう優しく微笑む。

「...怖くないです！」
「うん？」
「先生の本棚、見せてくれますか？」
「フハッ！また本棚？」
「私にとっては、ディズニーランドですから！」
「お前、安上がりだなぁ」

先生の大きな笑い声が静かな住宅街に響いて、二人顔を見合わせて「ヤバイ」ってクスクス笑った。

「ここ」

それには三階建てなのに、駐車スペースは5台分だけのマンション。

「15世帯入るのに車5台って。大家さん、計算間違えたのかな？」

先生の言い方が可愛くて、また笑っちゃう。