イロコイ・ライン 5th【ars K.N】 (ページ26)

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186.責任。ページ26

別に、操を立てようと思ってたって訳では無い。

ただ、先生以外とそんな風になるのだけは想像すら出来なかった。
ただ、先生以外を好きになる事が無かっただけ。

それでも周りの友達がどんどん色んな経験をして行って、大学で一番身近に居たいろはちゃんだって実は高校生の頃に全部経験済みだったって知って

焦らなかったと言えば、少し嘘になるかもしれない。

経験無く20歳になる事を「やらずのハタチ」って意味で「やらはた」ってからかわれた時期もあった。
勿論、悪気があってじゃなくて遊びのノリなのは分かってたから私も「うるさいなぁ」なんて笑って返してたんだけど。

あ、そうだ。
その時もいろはちゃんだけは、絶対に笑わなかったな。

「やらはたの何が悪いの？」って。
好きでも無い男とヤッちゃう女より、ずっとイイオンナだと思うけど！って、皆に言ってくれたっけ。

そのお陰もあって、自分のこの想いは間違ってないって思ってたし恥じる事じゃ無いって思ってたけど。
でも先生にこの想いが届かなければ、私は一生女としての経験が無いまま死んで行くのかしら？なんて思ったりもしてた。

だけど、やっぱり。

先生じゃなきゃ、嫌だと思ってた。
他の人に告白されても、少しも気持ちは揺れなかった。

って事は、結局...

「結果的には先生の為...になってたのかもしれません」

私が言うと、先生は「責任重大だな」って微笑んだ。

「えっ、あ、そんな！責任なんて感じないで下さい！これは私が勝手に...」
「オレ、責任持たないで良いよーな恋愛をする気は無いけど」
「...え...」
「聞いてなかったの？いろはちゃんとオレが話してたの」
「.....」

先生は、少し叱るような口調で話す。

「覚悟してるっつったでしょ」

私はやっぱり、間違ってなかった。

先生を好きで居続けて、本当に良かった。

「なぁ、腹減らない？」

ドキドキともキュンキュンとも違う気持ちをどうしたら良いのか分からなくて俯いてた私に、何でも無いように声を掛けて来る。

何か狡い。
先生は余裕だ。

「うん、減ったかも」

だったら私も、余裕な振りをする。
少しでも、先生に近付けるように。

私達は、そのままカフェで夕飯を食べて帰る事にした。

先生はテリヤキチキンのサンドイッチ。
私は、卵のサンドイッチ。
それだけでは足りないかなって、何故かレジ横にあったポテトチップスを買った先生。

そんな、今まで知る事の出来なかった先生の色んな姿に嬉しくなる。