イロコイ・ライン 5th【ars K.N】 (ページ14)

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174.レモン。ページ14

「腹減ってない？」
「空いてます！」

先生の言葉に心が躍る。

だって、先生とご飯に行きたいなーって思ってた。
まだ夕方だから行けるけど...って思ってたけど言えなかったから。

「何食いたい？」
「えー...っと...」

そうだ...ご飯食べたいとは思ってたけど、何を食べたいかなんて考えて無かった！
これ、『何でも良い』と質問返しはダメなんだよね...

「.....あ、お昼がサンドイッチだったんでそれ以外が良いです！」

上手く返せた！

「フハハッ！あんまり夜にサンドイッチ選ばなくね？」
「...そっか...」
「好きな食べ物とか無いの？」
「好きな食べ物...」
「じゃあ、ファミレスにあるモンなら何をよく頼む？」
「んー...ハンバーグかな？」

うんうんって頷いた先生が「じゃ、決まりね」って言うからファミレスに行くのかな？って思ってたんだけど、着いたのは大きな駅前のコインパーキング。

そこで車を下りて、駅前にあるビルの階段を上がって行くと一軒のオシャレなカフェ。

「いらっしゃ...あ！二宮先生！？」

入口で迎えてくれた綺麗な女の人が、先生を見てビックリした顔をした。

「御無沙汰してます」
「あらあら、本当にお久し振りですね！さぁ、どうぞ！」
「すいません、お邪魔します」

知り合いのお店...？

通されたソファ席。
ポスンと身体が沈む。

キョロキョロと周りを見てみる。
照明は落とされ気味で少し暗い。
バーカウンターの中には、髭のオシャレなお兄さん。

さっきの女の人が持って来てくれたお水の中には、レモンが一切れ。

「ご注文、お決まりですか？」
「じゃあ、ハンバーグをふたつ」
「はい、かしこまりました」

先生が注文してるのを横目で見ながら、レモンのお水を一口。美味しい。

「ここのハンバーグ、すっげぇ美味いのよ。ナポリタンも美味いんだけどね」
「先生、よく来るんですか？」

隣に座る先生は「久々に来た。何かお前を連れて来てやりたくて」って微笑む。

「オレがハンバーグ好きだって話をしたら、ここが美味いって教えて貰ったのよ」
「先生、ハンバーグ好きなの？」
「あれ？言ってなかったっけ？」
「あれ...聞いた事あったっけ？」
「アハ、どっちだよ」
「どっちだろう」

アハハ、って笑い合う。

お料理が運ばれて来るまで、さっき先生が読んでた小説の話を聞いた。

やっぱり残虐な物語で、食事の前にする話じゃ無かったねなんてまた笑って。
それでも思ってた通り、先生から話を聞くのは面白くて楽しかった。