【あんスタヤンデレ短編集】狂いは全て、愛ゆえに。 (ページ7)

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朔間零と一つの選択肢② ページ7

「A、“俺”はお前が他のやつと楽しそうに話すのは見たくねぇ。ある程度なら我慢するが、いきすぎたら…分かるよなぁ？」

紅い目を光らせて言った零。普段の穏やかな彼の面影はどこにもなく、あるのは嫉妬の固まり。

「分かった、よ。ごめんね、零」

途切れそうになる言葉をなんとかつむぎ、小さく言う。少し震えていることに気づいたのか、零は私を優しく抱きしめた。

「すまぬのぅ。じゃがどうか分かっておくれ」

さっきの魔王はどこへ行ったのか、もう普段の穏やかな零に戻っていた。私がうなずけば解放してくれて、二人仲良く手を繋いで教室に戻った。

─

──

───

次の日。宗が学院に来なかった。教室にも、手芸部の部室にも、どこにも姿がなかった。もちろん連絡もない。

その日だけならともかく、一週間以上来なかった。さすがに心配になる。同時に不安にも襲われた。

「ねぇ、零。宗、どこにいるんだろう…？」

部活中、不安を撒き散らすようにギターを鳴らしながら隣で寝転がっている零に聞いてみる。すると零は

「さぁのう。…もしかしたら──」

最後の方を小さく言って薄く笑う。聞き取れなかったところを聞こうとすると、

「Aせんぱーい！」

突然ひなたが抱きついてきた。

「先輩！この前言ってたオーディション受かったよ！」

嬉しそうに笑顔を見せた。仕事のオーディションのことだろう。本当に良かった。

おめでとう、と伝えようとした瞬間、横から拳がひなたに向かって放たれ、

「い”っ」

頬に当たる。勢いが強く、ひなたが尻餅をついた。信じられないように零を見るひなた。

そんなひなたをものともせず零はもう一度殴るために拳を構える。

「ちょっと零」

ギターを置いて止めようとするも、立ち上がったひなたとあとから来たゆうたに止められる。異常な零に怯えているのか、手が震えていた。

「A先輩、逃げて。なんかおかしいよ、朔間先輩」

耳元でこそっとひなたがつぶやき、ゆうたが私の背中を押す。ふらつきながら後ろを向けば二人が口パクで“逃げて”と言っていた。

なんでかわからないけど、言われるがままに私は逃げた。

思えば、これが地獄の始まり。