【あんスタヤンデレ短編集】狂いは全て、愛ゆえに。 (ページ6)

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朔間零と一つの選択肢／日向サク様リクエストページ6

彼と付き合ったのは、間違いだったのかもしれない。…いいや、だったのかもじゃなくて、間違いだ。

けれど、後悔した時にはもう遅い。私は気づくのが遅すぎたのだ。

純粋な愛は、もう命を奪うことさえ抵抗がないくらいに猟奇的な狂気へと変わってしまった。

＊＊＊

夜の夢ノ咲は静かだった。大きな満月が出ているなか、全速力で走っている私だけが異常に思えるほどに。

人一人いない教室に入り、中から鍵を閉める。鍵を閉めてしまえば彼でも入ってこれないだろうと思った。

“俺様”の頃はマスターキーを持っていたけど、それはいつの間にかなくなっていたし、何より多くある教室の中からここを突き止めるのは不可能とまではいかなくても時間は稼げるはず。

最悪、時間さえ稼げればそれでいい。せめて朝までは、隠れていたい。夜さえ過ぎれば逃げ出せる。この、死体だけが転がる学院から。

近くに気配がしないかを気にしながら息をととのえる。次走る事になれば、きっと捕まってしまう。

「皆…。零、どうして」

─こんな風に狂ってしまったの？

＊＊＊

数ヶ月前。零からの告白で私達は付き合う事になった。私もずっと零が好きで、やっと両思い。

アイドルだから本来彼女とかはまずいんだろうけど、薫、晃牙、アドニスをはじめとした何人かには報告した。薫は泣くふりをしたりしたけど、晃牙やアドニスはおめでとうと祝福してくれた。

「A、こっちへ来ておくれ」

そう言って抱きついてくる零。部活中も抱きついてくるからひなたやゆうたにすごい見られたのが恥ずかしかった。そのうち空気を読んでか出ていったりもしたし。

こんな風に最初は純粋な愛だった。付き合ったことが間違いなんて、思うはずない。こんなに幸せなことがあるかと思っていたくらいだ。

けれど付き合って数週間した頃。

いつものように宗と衣装のデザインについて話していた時。

「A、ちょっとよいかの？」

宗が返事をする前に私の手首を掴んで教室の外へ、人気のない廊下へと連れていく。いつもより掴む力が強くて、掴まれた手首が痛い。

「ちょっと、零」

離して、という意を込めて言ってみるも、過去の、“俺様”魔王の時の鋭い目で睨まれてはなにも言えなくなる。

恐怖を必死にこらえる私に、零はこう言った。

「A、“俺”はお前が他のやつと楽しそうに話すのは見たくねぇ。ある程度なら我慢するが、いきすぎたら…分かるよなぁ？」