【あんスタヤンデレ短編集】狂いは全て、愛ゆえに。 (ページ15)

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深海奏汰の真っ赤な宝物／塙様リクエストページ15

「かな、た？」

海洋生物部の部室。日々の疲れが蓄積した結果、癒しを求めて来た場所。水槽があり、“青色”が多い部室は、“赤色”が飛び散っていた。水槽に、床に、奏汰に、たくさんの“赤”。

異常な光景だ。言葉を失ってしまうほどに。

「A、どうしたんですか？」

異常な光景をものともせず、平然と奏汰は聞いてくる。そんな奏汰の近くに、横たわる誰か。奏汰よりも“赤く”染まっている

最初こそ誰か分からなかったけど、よく見れば誰か分かった。

「薫、なん、で？」

横たわっていたのは薫。名前を呼んでもピクリともしない。いつもなら、すぐによってきてくれるのに。

「かおるは、もうはなせませんよ。もう、うごきません」

冷たい目で薫を一瞥して、私に答える。

「奏汰が、やったの？」

溢れそうになる涙をこらえながら必死に睨みつけた。やっぱり、薫は動かない。”赤“は薫の血だ。

「はい。ぼくたちのじゃまだったので。なんでにらむんですか？」

こてんと首をかしげ聞いてくる。今さら気づいたけど、両手にはナイフが握られていた。

ねぇ、じゃまってなに？じゃまだったから殺した？奏汰が薫を殺した？

「邪魔って、なんなの」

声が震えた。当然だろう、こんなの。倒れそうになりながらもおぼつかない足で薫のもとへ行き、薫を抱き寄せる。体温はもうない。ただ、冷たい。

「かおるは、しんでもぼくたちのじゃまになるんですね…。それとも、Aがおかしいんでしょうか？」

私の質問に答えることなく、奏汰は一人でぶつぶつとなにかを呟いている。そんなときですらしっかりとナイフは両手にある。

虚ろな目でナイフを見つめた奏汰。いつもの面影などなく、無感情な人形のようだった。罪悪感など当然ないのだろう。

そんな奏汰に私は恐怖しかない。私だけで止めるのは不可能。話し合いなんてもう出来ないだろう。かといって放っておくのは危険すぎる。

…逃げよう。逃げて零達に助けを求めよう。

幸い、奏汰はまだぶつぶつとなにかを呟いている。そっと動けば、ばれないかもしれない。

心のなかでごめんね、と薫に謝り、床に横たわらせる。足音がたたないように気を付けながら奏汰から離れる。

部室のドアまでたどり着き、出ようとしたところで…

「にがしませんよ、A」

奏汰に、腕を掴まれた。