２ ページ27
食料は待ってきてはいるが此処は木の実が充実しており、どうやら食べ物には困らなさそうだとAは分析して散歩に出ているクザンを待った。
そろそろ戻るだろうかと立ち上がり様子を見に行こうとすると向こう側から歩いてくる相手の姿が見えて手を上げ、軽く振ってみる。
正面から見える彼は軽く手を上げて返事をしていた。
小走りで向かい抱き着けばAの頭を優しく撫でながら、ただいまと口を零す。
「丁度良かった、晩御飯がそろそろ出来るの」
「あらら、タイミング良いじゃないの。なら食べるか」
近くに木製の机と長椅子があり、腐っていたりはしていなかったので其処で食事をする。
散歩していたクザンに何か見つけたかという質問を投げかけたり、拾った木の実の種類やこれから進む針路の話をしたり、食べ終わったら散歩に行こうかなとAが言うと俺もついてくかと向かい側に座っている彼が言う。
食器の音と温かく照らすランプ、微かに聞こえる波の音。…今日も海は平和だ。
食事を終えれば早速行こうと立ち上がると、相手も立ち上がり平坦な長く続く道をゆっくり歩き始めた。
「少しずつ冷えてきているのね…。此処は街だったのかしら、村ではなさそうだけど」
「そうだな、散歩してきたが残された物や雰囲気的に街なんじゃない」
後頭部を掻きながらいつも通りで気怠げな様子で話す相手はいつの間にか、自然にAの右手を緩く恋人繋ぎにしながら握り前を歩いた。
気付いたAはその手に視線を落とし、柔らかな笑みを浮かべる。
一通り見終わったところで元の場所へ戻り、欠伸する彼女にもう眠りに行こうとクザンが提案。
それもそうねと返答して笑えばランプの火をフッと吹き消して心地良い草の上で寝転がれば、クザンの腕に包まれるように抱擁されて瞼を下ろす。Aは相手の胸に擦り寄っていた。
ああ、この感触と匂いと声が眠りに誘う。
「相変わらず俺の匂い好きだなァ、A。抱いて良い？」
「だーめ。あんなに歩いて少し疲れて眠いのに、寝ようって言ったのクザンでしょう」
「そんな擦り寄られると毎回耐えてる俺の身にもなってちょうだいな。抑えるの偉いと思わない？俺」
「………次の場所が野宿じゃなかったら考えてあげる」
まあどの道“今日は”しないつもりだったから良いよ、と彼から言われた言葉にAは何だか少し引っ掛かったが問い掛けてもきっと話す気はないのだろうから聞かなかった。
そのままAは眠りに落ちていき明日の朝を迎えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
零猫(作者1)(プロフ) - ねむさん» 有難う御座います！師走で何かと忙しいですが、またチマチマ頑張っていきます！ (2022年12月10日 12時) (
レス) id: 909ea21d0e (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - 次の更新も楽しみにしています！ (2022年11月29日 9時) (レス) id: 5d4dcca220 (このIDを非表示/違反報告)
零猫(作者1)(プロフ) - 碧.さん» その言葉で大変頑張れます！( ᷇࿀ ᷆ )貴方の勇気が私の活力になりましたので、またお話が思い浮かんだら更新していきます！！( 'ω') (2022年11月6日 23時) (レス) id: f107f7bb54 (このIDを非表示/違反報告)
碧. - 何時も楽しく読ませて頂いております！ずっとコメントしたかったのですが勇気がでず今日やっとコメントが出来ました(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)旧三代将もウタも大好きなのでこれからも更新楽しみにしています！ (2022年11月5日 23時) (レス) id: 7eb027a135 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - 零猫(作者1)さん» 新しく更新されたのも最高でした！ありがとうございます！ (2022年10月22日 17時) (レス) @page20 id: 8adf995a6d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：零猫(作者1) | 作成日時：2022年10月15日 18時
