イロコイ・ライン【ars K.N】 (ページ39)

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39.答えがある。ページ39

「せっかくだしさ、何か飲んで行こうか」

いろはちゃんがカフェの方を指さしたから、うんって頷く。

カウンターで2人、メニューボードを見上げて「どれにする？」なんて相談。
いろはちゃんが、ソイラテ。
私は、カフェモカ。

そう言えば、お腹減ったね。お昼だもんね、ってお互いサンドウィッチも追加。

出来上がったドリンクを持って、「どの席にする？」ってまた相談。
やっぱソファでしょ！って、店の端っこに並ぶ1人掛けソファが小さなテーブルを挟んで向かい合わせに置いてある2人席に落ち着いた。

日曜だけどお昼ご飯の時間だからか、カフェはまだそこまで混んでない。
きっと、おやつの時間になると一気に混むんだろうなと思う。

カフェモカを飲んでると、店員さんがお皿に乗ったサンドウィッチを席まで持って来てくれた。
卵サンドと、海老カツサンドを2人でシェアする。

「ねぇ、いろはちゃん」
「ん？」

口いっぱいにサンドウィッチを頬張ってるいろはちゃんが、ほっぺたをリスみたいにして私を見る。

「高校の時の部活って何してたの？加藤さん、部活の先輩なんだよね」
「んー、んん！」

いろはちゃんはソイラテで口の中の物を流して、「演劇部！」って答えた。

「へぇ！演劇部！いろはちゃん、似合う！ヒロインでしょ？」
「ちっがうよー！私、裏方。演出とか。そっちの方が好きだったから」
「そーなんだ！あ、じゃあ加藤さんは役者さん？」

チラッと本屋の方に目をやって加藤さんを見ると、背も高いし目鼻立ちもクッキリしてる。
言われてみれば、舞台映えしそう。

「ううん、シゲ先輩は脚本」
「脚本？」
「既存のシナリオを上演時間に合わせて書き直したり。オリジナルを書いたり」
「へぇ、何か凄いね」

それを聞くと、今度は加藤さんがすっごい知的に見えて来る。

「Aちゃんは部活してなかったの？」
「え...あぁ、うん。してなかったんだよね」
「じゃあ、高校の時に夢中になってた事って何？バイトとか？それとも...」

いろはちゃんがニィっと笑って、身を乗り出した。

「恋愛？」

過剰反応は、しなかったはず。
だけど、不自然に無反応過ぎたらしい。

「Aちゃん、隠し事が下手だよね」
「そんな事は...無いでしょ」
「あー、なるほどね。そこに答えがあるんだ！」
「答え？何の？」
「私、前に訊いたでしょ？」

身を乗り出したまんまのいろはちゃんが

「心に決めた好きな人が居るの？って」

私を指差して、ニッコリ笑った。