11.専属。 ページ11
隣に座ってた先生は、私のペットボトルを開けるとすぐにまた自分の椅子に戻った。
それは寂しかったけど、教室以外の場所で先生と二人きりになってる事が嬉しくてミルクティーも上手く喉を流れて行かない感じ。
「あ...これコピーしなきゃじゃん...」
机にあったプリントの原稿を見た先生が、チッと軽く舌打ちをする。
「秘書欲しいわぁ、秘書！」
「えー？教師に秘書ですか？」
「あ、知らねぇの？大学教授には居んのよ？秘書」
「先生は高校教師ですけどね」
「フハハッ！それを言うなや」
腕を組んで可笑しそうに笑いながら「秘書欲しい」ってまだ言ってる。
「秘書のお仕事内容は何ですか？」
「えー？オレのお手伝い全般」
「雑用係ですか？」
「そうとも言う」
うむ、って感じで偉そうに先生が頷いて
「オレ専属のね」
ニィっと片方の口角を上げた。
それ。
好きなやつ。
「先生」
「ん？」
「秘書、やってあげても良いですよ」
「お。上から目線」
「国語、嫌いじゃないし」
「結城、日本語好きだしな」
私の言葉を本気にしてるのか、してないのか、よく分からない先生の態度。
「今日みたいに手伝う事があれば、私に言ってくれても良いですよ」
「ンフフ、だから何でちょっと上から目線なんだよ」
コピーしなきゃいけないってゆー原稿をピラピラと左手の指先で揺らしながら、机に肘を置いて右腕で頬杖をついた先生が眉間に皺を寄せて笑う。
その視線が私にはあまりにも刺激強くて、何か色々誤魔化す為にミルクティーをグビグビ流し込んでみた。
上手く飲み込めた。
「あーお前、さてはご褒美が目的だろ」
「...あ。バレましたか」
「やっぱなー。そんな何度もご褒美あげらんないよ」
「何度かに一回で良いです」
何が目的だと思われても良い。
ご褒美なんていらない。
むしろ、先生と話せる時間自体がもうご褒美。
「じゃ、たまに手伝って貰おうかな。誰も手伝ってくんないし」
「フフッ」
「アイツら冷たいよな。誰か手伝ってって言った瞬間思いっきりオレから目逸らしたからね！」
結城も見たろ？ってちょっと身体を前のめりにして、力説。
「ちょっと寂しかったもん」
「みんな予定があって、早く帰りたかったんですよ。きっと」
「結城は予定無いの？」
「予定が無いって言うと何か悲しいですね...」
私がボソっと呟くと、先生は「ゴメンゴメン！」って顔の前で手を合わせて
「目を合わせてくれる子が居て、嬉しかったよ」
優しい目をした。
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2015年11月20日 13時
