【オリジナル】令嬢豪快メシ

食べなおし ページ3

朝食を食べ切ったわたしは、両親と姉に「散歩してきます」と嘯き食堂を出て、パーカーとジーンズに着替えてから家を飛び出した。


　何のためか？


　勿論、飲みなおしならぬ朝食の食べなおしのため。

　何故なら、わたし・来本牡丹の腹の虫が「食べ足りぬ、解せぬ」と騒いで騒いで仕方ないからである。

　満足できると思う？ 食いしん坊のわたしが！

　あんな、味が薄くて量も少ないあんの朝食だけで！

　思い出すと、妙に腹が立ってきた。

　憤慨modeに突入したわたしは、怒りを表すように歩行速度を速めた。


　食べなおしの際には毎回と言っていいほどお世話になっている、パン屋さん「bonfire」の前で足を止めた。

　わたしは、パン屋さんに堂々と掲げられている看板にさらりと目を通す。

　この行動は、パン屋さんに足を運んだ時に必ず行う日課(ルーティーン)となりつつある。

　『bonfire』の、文字は今日も読めない。

　一度店員さんに読み方を聞いたことがあったが、「ぼんふぁいや」とか盆踊りの一種のような読み方をしていてわたしにはとても真似できなかった。

　ちなみに、英語らしい。

　わたしはがらりと店頭の扉を開ける。

　いつものことだ、パンの心地よい香りがわたしの鼻腔に侵入してくるは。

　りりりんという聞きなれたベルの入店音に、ばっと店員さんが振り向いた。

　店員さんは客の姿に気づき、わたしのような不愛想人間(あんふれんどりぃぴぃぽぉ)には真似できない、接客スマイルを浮かべる。

　わたしは会釈をすると、注文を受け付けるカウンターまで向かう。

　店員さんは接客スマイルはそのままに、高速移動でカウンターで接客の態勢をとった。

　…………態勢って言うと、なんか空手みたい。

「ご注文は何にいたしましか？」

　わたしは、いつものメニューを口にした。

「えーと、極太カツサンドを一つ、張り込みメロンパンください」

「かしこまりました。お持ち帰りになさいますか、ここで食べていかれますか？」

「イートインでお願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください」

　店員さんが極太カツサンドと張り込みメロンパンを取りに奥へ引っ込んだのを見届けると、わたしは店の端にあるイートインスペースの椅子に腰を下ろした。

　おっと、そうこうしている間に店員さんがやって来たぞ。

「ご注文のカツサンドと張り込みメロンパンでございます」

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