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彼と付き合い始めて一ヶ月。
彼は私を「Aちゃん」って呼んで、私は彼を「智くん」って呼び始めた。
最初は慣れなくて、何度も「さとっさん」って呼んじゃって「うそうそ、今の無し。智くん」と呼び直してた。
もう智くんの家にも行ったし、智くんも私んちに来る。
でも、まだ泊まったりはしてない。
...というか、そーゆー事をしてない。
......というか、キスもしてない。
.........というか、手も繋いで無い。
出逢い方が、理想形じゃ無かった事はこんな所に影響を出した。
私は智くんの中で『ナンパについて行く女』が第一印象なワケ。
本人に聞いた事は無いけど、まぁ実際ナンパについてった女。
だから、身持ちの軽い女だとも思われてるんじゃないか...って不安になった。
貞操観念ユルユルで、誰とでもイェーイ！的な。
そーゆーイケイケだと思われてるんじゃないか？って。
そう思ったら、怖くって。
智くんが手を繋ごうとして来ても、何気なーくスイーっと手を避けてみたり。
ハグされそう！って思ったら、「あ！あれは何ー！？」なんて空を指差してみたり。
そんな時、彼は「え？どこー？」って素直に空を見上げてくれるから、ちょっとごめんね...って思う。
そうなんだ。
不安になっちゃう位、私は智くんを好きになっていた。
「さとっさん」って呼んでる時から、好きだった。
だから、告白されて本当は爆発しそうに嬉しかったのに。
本当はその場ですぐ抱き着きたかったのに。
週末、水族館でデートした。
魚を見て「釣ってみたい」と言う智くんと、「美味しそう」って言う私。
青い光の中の智くんを見てると、手を、繋ぎたくなった。
だけど、やっぱりその勇気が出なくて
出しかけた手は、ポンポンと彼の肩を叩いて「イルカ、あっち！」なんて言って。
水族館を出て、近くの海岸を歩く。
波打ち際で波から逃げ遅れた智くんのスニーカーが濡れて大笑いしてたら、私の足元にも波が来たから逃げようとしたら砂に足が取られた。
「あっ！」
「おっと！」
こけそうになった私の腕を、智くんが掴んでくれて危機一髪。
「ありがと！ビックリし...」
グイっと腕を引き寄せられる。
「おれ、一応男だよ？」
「...分かってる」
「分かってないよ」
ムゥって顔してる。
「もう焦らし過ぎ！」
やっぱり怒ったような智くんのキスは、勢い良すぎて
歯がガチンと当たって二人で笑い合った。
・・・・・END・・・・・
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2017年2月22日 17時
