智あり雅やかな君に、潤い和み我も翔ぶ。【ars短編集】 (ページ22)

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●あなた暮らし【M】ページ22

彼の友人達曰く、外ではバリバリに働いてる...らしい。
隙が無い...らしい。

その彼を、私は知らない。
だって、出逢ったのは仕事関係じゃ無くてジムだから。

私は日頃の運動不足の解消に！と通ってるだけだから、すっごい緩いメニュー。
ランニングマシンでも、お婆ちゃん並みのノンビリ設定で窓の外をボンヤリ眺めながら走ってた。

そんな私の隣で、アスリートか！？って位に本気全開で走ってる人が居た。
Tシャツとハーフパンツで、まるで部屋着な私とは違ってガッツリとスポーツウェア。
ハァッハァッ、って漏れて来る息も規則正しい。

気になって隣を盗み見て、驚いた。
彫刻が走ってるのかと思った。もしくは、お人形。

汗で乱れた髪がオデコに引っ付いてるんだけど、それすら計算されたみたい。

パーフェクトだな。パーフェクトマンだな。PM。

でもまぁ、可愛い感じの人が好きな私のタイプでは無いなー！なんて、謎の上から目線で思いながらマシンを下りたら、お隣さんも終わったらしくマシンから下りた。

タオルで顔の汗を拭きながら、チラ見。

眉間に皺を寄せて、半開きの口からは相変わらず荒い息遣い。
セクシーの塊じゃないか。
18歳以下に見せちゃいけないじゃないか。

そんな彼が、スポドリが入ってるんであろうボトルを手にして、ストローを咥えた。
その瞬間ズズズズズー！と、酷い音。

思わず「空っぽ！」って言っちゃって、慌てて口をタオルで押さえる。
手遅れだけど。
もう言っちゃったけど。

もちろん彼は、驚いたようにこっちを見た。

うぅ...目力凄い...睨まれたら蛇になるヤツだこれ。
ちゃんと謝らなきゃ。

「ごめ...」
「アハハッ！さっき、飲み干したの忘れてた！」

えっ？

「すっげぇ音したよね、超ハズイんだけど！」

ケラケラ笑ってるその人は、さっきまでのPMは何処へ？ってキョロキョロしてしまう程に砕けてて

「あ...良かったら、これ飲みます？」

私がまだ半分は入ってる自分のボトルを差し出すと

「良いの？間接キスになっちゃうけど」

なんて、ちょっとゲスいジョークなんかも言っちゃって

何、何、これは...

私の好きな、『可愛い感じの人』じゃないか！！

そんな運命的(って、誰も言ってくれないから自分で言ってしまう)な出会いから半年後、私はその彼とお付き合いを始めて

その一年後、一緒に住む事になった。

潤との毎日は、『生活』じゃなくて『暮らし』だなと感じさせられる。

私は潤と、暮らしてる。