ノートン・キャンベル ページ29
職場に就いた彼は誰よりも勤勉に、時として妥協をせず、必死に働いていた。
そんな彼を見守るのが好きで、気が付けば視線で追うようになった。
いち信者として可愛がっている感覚とは違う。
これはきっと__なんて思いながらも鉱山を見守ることを続けていた。
楽しそうな貴方をずっと見ていたい。
幸せそうな貴方をずっと見ていたい。
仲間に囲まれて、明るくて、無邪気だった貴方を。
これまでと同じようにこれから先もそうだと思っていた。
__あの事故が起こるまでは。
＊
鼓膜が張り裂けそうなくらいの爆発音が轟く。
続いて大きな揺れ、穴が崩れていく音。
それは猛獣が吠えているかのような恐ろしさで。
労働者たちは無我夢中で地上に這い上がり、脱出するべくもがいていた。
まさに惨状。
長閑で平和だった鉱山が、一瞬にして地獄へと早変わりした。
...どうして？
なにかが爆発した？
突然？
私は鈴の棒を持って、音のした方へ降りていく。
もしかしたらまだ閉じ込められている労働者がいるかもしれない。
...そうだ、あの人は？
地下へ降り立つと、そこには__
｢なぜ...！お前のせいで鉱山が...！｣
｢...｣
｢なにか言えよ！早く助けてくれ！｣
地上に出てきた労働者とは比較にもならない、多くの労働者たちが閉じ込められていた。身動きが取れていない状況だ。
そしてそんな中、1人だけ自由に動ける人が。
__私がずっと見守ってきたあの子が。
｢ノートン！行かないでくれ！！｣
助けを求める彼らの声が頭に響く。
取り敢えず助けなければと私はなんとかして念を飛ばしてみるが、彼らの窮地の状況は一向に変わらなかった。
｢あぁ、A様...｣｢守神様...｣｢女神様...｣｢どうか私たちに救済を...｣｢A様...！｣
彼らは手を伸ばし私に助けを求める。
こんなに懇願されたのは初めてだ。
祠に手を合わせ続けてくれたのはあの子だけ。
貴方たちは何もしてくれなかった。
それなのに今、こういう時だけ縋って_
『...』
いやいや、何考えてるんだ私。助けなきゃ。
私はこの鉱山の守神で_
『あ...』
鉱山の守神なら、"私を崇拝しない労働者たち"は関係ないのでは。
寧ろ守るべきなのは"毎日手を合わせてくれたあの子"だけでいいのでは。
｢クソ...！ノートン！ノートン！｣
労働者たちは私を拝めるのをやめ、あの子の名前を繰り返し憎らしそうに叫び続けた。
私には。
あの子だけ、...ノートンさんだけ、居ればいい。
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怜(プロフ) - 沙羅さん» ありがとうございます！！沙羅さんのコメントが嬉しくて私も毎回栄養補給させて頂いてます(？) 他作品の方はこれからも続くので、どうか末永くよろしくお願いします...！ (2020年6月25日 0時) (
レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 完結おめでとうございますとお疲れ様です…！どんな結末になるんだろうと色々妄想(？)してたのですが、ちょっと切なくて甘い感じ、好きです…！今回も栄養補給させて頂きました(ｴﾍﾍ)、ありがとうございます…！！喫茶店の方も楽しみにしてますね！ (2020年6月24日 21時) (レス) id: 3aa856ffa1 (このIDを非表示/違反報告)
?mi?(プロフ) - ゆったり更新で大丈夫ですっ！気長に待ってますっ！！ (2020年6月17日 4時) (レス) id: 9bb4cee45f (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - ?mi?さん» ありがとうございます...！ゆったり更新ですがどうかよろしくお願いします！ (2020年6月16日 18時) (レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
?mi?(プロフ) - 続きめっちゃ楽しみにしてますっ！！ (2020年6月16日 3時) (レス) id: 9bb4cee45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：怜 | 作成日時：2020年6月6日 16時
