かつて死んだ彼女の名前【鬼滅の刃】

第八話 炎柱 壱 ページ21

｢すまない!!怪我をしたので手当してほしい!｣


まるで道場破りのように玄関前で大声で叫ぶのは炎柱の煉獄杏寿郎だ。

いきなり入ってきた柱に葬儀屋の人達も驚き怯えている人もいた。

彼女はため息をつきながらも煉獄を入れた。


｢すまない!いきなり押しかけて!｣


『いえ...大丈夫です』


どうやら常識が持ち合わせているらしい。

すまないと思うなら大声で入ってこないでほしいと四月一日は思いながら手当する。

腕を深く切られていた。
普通の人なら思わず目をそらしてしまうほど。


｢君は...なかなか腕がいいな!｣


『ありがとうございます。でも、おだてても何も出ませんよ』


と珍しく少し辛めなことを言う。

実の所彼女は煉獄が柱の中で苦手なタイプだった。
人のテリトリーにズカズカと入ってきて彼の炎で人を温める。

初対面の能面を被った女に手をとって間近で自己紹介する男なんて仲良くするのも願い下げだ。


それに


｢なぜあのような役職を作ったんだ?｣


その言葉で一気に嫌いになった。

彼女は葬儀屋を愛している。
もちろんあの仕事が好きな訳じゃない。

だが、葬儀屋の仲間を侮辱されているようで腹が立った。



手当も終わり彼女は立ち上がる。


『終わりましたよ』


｢ありがとう!....?この香りは....?｣


その言葉に四月一日は血相を変えて自分の面を彼に素早くかぶせた。

煉獄は何事かと少し暴れるが数秒すると大人しくなった。


『いけない...嗅いではいけない』


彼女からは特有の血の匂いがある。

それは血鬼術のようなもので相手を惑わす力がある。

この時彼女はほんの僅かに血を流してしまった。
何故か煉獄はこの香りの影響を受けやすかった。


彼女は煉獄をお面をかぶせたまま煉獄を屋敷から出ていかせた。


『....出入り禁止にしましょうかね...』


もう会うこともないだろうと思っていた。




『......』


｢む!葬儀屋の...久しいな!｣


結局また会ってしまう。しかも結構今会ったのはまずかった。

なんせ隣には鬼の響凱がいるのだから。

冷や汗が出る。

どうやらバレていないらしいが、今帰ったら逆に怪しまれてしまう。

やんわりと挨拶をしながらもなるべく離れたところに2人で座った。


｢隣の般若の面は新人か?｣


と何故か近づいてくる。

最悪すぎた。

他の柱なら無関心や避けられるのに彼の場合、近づいてくる。
だから苦手なのだ。

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