70話 ページ40
「ていうか、どうしてここに？」
「忘れ物を取りに来て、それで、上から音がしたから……」
それでか、と彼女は頷いた。もしかして社の方の扉も開けてくれるのだろうか、と期待したが、Aはそれには首を振った。鍵を持っていないからダメだ、と。錠が複雑なので、無理矢理開けるのも不可能らしい。では逆にここへはどうやって入ったのかと尋ねると、鍵を開けて入ったと言った。元々屋上の鍵の管理は、Aが行っているそうだ。
「ね、少しだけ付き合ってくれない？ 飲まなくていいから」
一人で飲むつもりだったんだけど、案外これ美味しくなくて。
Aはそう言って、また笑った。
＊ ＊ ＊
柵を乗り越えて、彼女の隣に腰を下ろす。足元に吹き付ける風がひどく冷たい。どこを見つめてよいか分からず、敦は何となく空を見上げた。雲一つない、綺麗な星空だった。
「結構高いところなんだね」
「うん。ここからだと、星が綺麗に見えるでしょ」
高速道路が目の前にある方角を向いているので、探偵社よりも高い建物は周りになく、そして、大して明るい街灯もない。確かに星が綺麗に見えるわけだ。
Aに頼まれたので、敦は自身の生い立ちと社に来てからの話を少しずつ語っていった。思えば、この一週間は本当に激動の日々だった。あれよあれよという間に入社が決まったと思ったら、その日のうちに芥川と出会い。そして乱歩が事件を解決した翌日には鏡花と出会って。そして今日には、自身に懸賞金をかけていた組合までやってきた。孤児院にいたころよりも、何度命の危機に瀕したことか。芥川への恨みつらみを吐き出すと、彼女は腹を抱えて笑った。鏡花との話をすると、それはそれは真剣な表情で、「太宰さんと同じことは絶対にしないでね」という謎の助言をいただいた。そして、「ちゃんと必要なときには守ってあげなね」とも。前者に関しては何のことかよく分からなかったが、後者は太宰からも言われたし、勿論敦自身もそのつもりだ。だから、はい、と大きく頷いておいた。
大体話し終え、会話が一旦途切れた後。敦は、気になっていたことを聞いてみた。
「あの、前職ってもしかして、お酒と関係あったり……？」
「わあすごい。誰も今まで気づかなかったよ、それ。私70万の掛け金やってないんだけど、お支払いするべきかな？」
「いや、それは大丈夫」
「それはよかった」
流石にここでねだるほど、敦は強欲な男ではない。
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
