59話 ページ27
(……ん？)
Aはふと違和感を覚えた。太宰は、拘束されても易々と突破できる男である。では何故、今この男は拘束されたままなのか。
「なんで縛られたままなんです？」
「……A、本当に頭が回っていないんだね」
太宰が呆れたように云った。ムッとしたが、分からなかったのでとりあえず話を聞くことにする。
「この器具は、左右の手が互いの手からかなり離れたところに設置するものになっている。どう伸ばしても、両手の指を組むどころか掴むことすら難しい。いくら私とはいえこの状態では流石に無理だ。君も両手が使えなければ拘束具を外せないのは知ってるでしょう」
それに、と太宰はさらに付け足す。
「君、気づいてるかい？ 口調が完全にあの頃に戻ってる」
昨晩あんなに注意したのにねえ。
嫌みったらしく云われ、Aはようやく気がついた。まず拘束器具についてだが、Aとて、簡単な作りのものならヘアピン二本で十分だ。だから、何ならピンだけで突破でき、何なら突破できないのかの目利きはいい。今太宰が吊るされているものは確実に無理だった。理由は太宰が指摘した通りだ。本来ならば気づけるところだったが、今回は本当に頭が回っていないのかもしれない。
そして次に口調だが、こちらも全く気がついていなかった。まあ普段も対して意識していないし、別にこれは頭が回っているいないの問題ではないだろう。だが、Aにとってもっと重要なことを太宰は口にした。
昨晩あんなに注意したのにねえ。
これはつまり。
「ねえまさかとは思いま……思うけど、昨日私に抱きついたりした？」
「君があられもない姿を晒してたね」
「嘘云わんでください」
うっ、とAは顔をしかめる。夢だと思っていたことが、まさか現実だったとは。
「冗談だよ。……でもまあ、効果はなかったみたいだけどね」
「効果？」
「私がなんの考えもなしに抱きつくように見えるかい？」
ええ、と答えそうになるが何とか堪えた。まだ話し続けそうだったので、無言で続きを促した。
「君が来るなら地下通路だと思ったんだ。あそこは電気が通っていない。何もしなければ君がこうなるのは予め予想していた」
じゃらりと鎖が動く音がした。何となく、云わんとしていることが分かった気がする。
「だから前もって『電気のない状況』を作り出して馴れておけば、平気かと思ったのだけど」
この様じゃあね、と太宰は笑った。
「……ああ、それは」
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
