56話 ページ24
サングラスの男が情報室に案内してくれた直後に逃走しようと試みたが、すぐにそれは断念せざるをえなかった。今度は情報室の中の女が、わざわざ空いている席まで案内してくださったのだ。できあがったら合図していただければ印刷いたします、と笑みを浮かべられ、Aも眼前に置かれたパソコンと向き合う他なかった。
印刷されるのであれば、文章らしきものは作っておかなければならない。仕方なく、Aはでっち上げの組織に潜入していたことにし、嘘八百の事実を書き連ねた。恐らくこの文章もマフィアのどこかのサーバーに送られるから、誰かが後で見るのかもしれない。こんな組織あっただろうかと首をかしげるだろうが、そんなのAの知ったことではなかった。
けれど、情報室にきて役に立ったこともあった。太宰の居場所が判明したのだ。理由は、入口付近で喋っている構成員達の会話だった。
「おい、聞いたか。あの太宰治が捕まったらしい」
「それガセだって聞いたぞ」
「いいや、本当らしい。今は地下牢に……」
地下牢とはこれまた面倒くさいところに行ってくれたものだと思う。あそこは見張りが厳しいのだ。
どうやって地下牢まで行こうかと頭をひねりつつもキーボードをたたき続け、何とかそれらしきものを作り終えるころには、再び頭痛が激しくなってきていた。当然だろう、情報室はパソコンが大量に置いてある。電力が凶器レベルと言っても差し支えない。
合図をして印刷を頼み、その紙を受け取るとようやく外に出してもらうことができた。A４で５枚分も書いたのだ、適当に作ったにしては完璧だろう。外に出た途端にまた頭がズキンと痛んで、指先が微かに熱くなった。また倒れて時間をつぶしては、同じことを繰り返す羽目になるだろう。今度こそ医務室に送られるかもしれない。まずい、急がなくては。
＊ ＊ ＊
何とか地下牢の入口まで辿り着き、いざ入ろうとしてみれば、見張りは誰一人いなかった。何故、と思案するも、答えは入口の扉を開ければすぐにわかった。血の臭いが立ち込めて、そこら中に血が飛び散っている。まだ乾いていないものが多く、直近のものであることがわかった。だが、死体は一体も見当たらない。
(……この量の血は)
誰がやったのかは見当がついた。芥川だ。何があったのかは知らないが、見張りが芥川の気に食わないことをやらかしたか、反逆したか、とにかく殺されたのだ。
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
