50話 ページ18
Aは樋口にバレないように、小さく息を吐いた。この樋口、という女が、こちらを殺害する心算なのか、それとも本当に道案内をしようとしているのかが、まだ分からないのだ。確かに図書館側が出口の変更を本当に伝え忘れただけなのかもしれないし、恐らくマフィアに捕まえられた誰かさんのせいで現在マフィアが大忙しなのは本当のことだろう。けれど、この世界にはとある有名な言葉がある。『噓をつく時には、真実を一つ混ぜるだけでいい』。十の噓に一真実を混ぜるだけで、簡単に相手を騙すことができる。
この扉の向こうに何が待っているのかなど、少し想像を働かせるだけでも選択肢は片手を超える。ここまで警戒してしまうのはもはや度が過ぎるような気もするが、現にその度が過ぎるやり方で人が死んでいくのがこのマフィアなのだ。
「どうかされましたか？」
樋口が訝しげな声を上げてこちらを向いた。何か悟られてしまったのだろうか。流石現役マフィアだ、恐ろしい。Aは咄嗟に辺りを見回し、向こうから見えているか定かではないが、誤魔化すように笑顔をつくった。
「いえ、その……ここがどこなのかが気になりまして」
「ああ……そういえば、貴方はご存じないんでしたね」
樋口は少しこちらを見つめた後、また扉に向き直った。何とかやり過ごせたらしい。Aは胸をなで下ろし、樋口に続きを促した。樋口は扉へ近づきながら、Aに説明を始めた。
「ここは簡単に云うと演習場です。暗闇の中での作業の練習、例えば爆弾の取り付け解除、暗闇での潜入脱出などです。視界を奪った状態の訓練に使用しています」
「ああ、だから電気が通っていないんですね」
「ええ、必要ありませんし、余計な電力を消費しないで済みますから。丁度二年前にここが建てられたんですが、場所的に地下通路と重なってしまうということで、地下通路の出口をここに繋いだのです」
道理でAが知らなかったはずである。二年前ということは、図書館の合言葉もこの工事に伴って変更されたのだろう。
こちらからは完全な死角となっているために樋口の手元が見えなかったが、何度か金属音がした後、ガチャンと一際大きな音が鳴った。扉の鍵が開いたのだ。
「なので、この扉の奥に、また地下通路の続きがあります。少し歩けば、以前の出口と同じ場所に着きます。そこまではご一緒しますので」
Aはその言葉に頷いた。嘘にはとても聞こえない。
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
