45話 ページ13
「もう、どこも同じじゃない！」
Aは右手に触れている何か――ここもおそらく壁だろう――めがけて、思い切り拳を叩きつけた。とは云っても、ただ単に壁に八つ当たりしているわけではない。出口を探しているのだ。
建物というのは、壁で覆われている部分と扉がついている部分で、叩いた時の音が違う。壁の場合は後ろに詰め物がしてあるので音が響かず、扉の場合は後ろが空間なので音が響く。どこか閉鎖空間に閉じ込められた時や暗闇で出口を探す時、はたまた隠し扉を見つける時などにも有効な方法だ。
現在Aはありがたい事に暗闇且つ閉鎖空間にいるため、この方法の有効性を試す絶好の機会だった。生憎、シチュエーションは最悪だったが。
一時は電気の塊を放って明かりを灯そうか、と考えたものの、それはリスクが高すぎて実行に移せなかった。電気を放つ時には、手の周りから火花が散る。若しこの空間が無臭かつ引火性の何かで満たされていたとしたら、火花が散った瞬間に、この世からおさらばしなければならない。例え空気が引火性のものではなくても、引火し易い物が傍に置いてある可能性もある。
マフィアの敷地内で、人知れずひっそりと、誰にも知られずに黒焦げとなる。死体の正体を知っているのは、あの受付の女だけ。遺骨の引き取り手何て誰もいない。墓場はきっと、ごみ焼却施設か東京湾だ――その情景を思い浮かべるだけでもぞっとする。
そういう訳で、地道に壁を叩き続けてきたAだが、幾ら叩いて回っても音はこもるばかりで、全く響きそうになかった。手が痛くなる一方で、脱出の手がかりはちっとも掴めない。しかも、この部屋はとてつもなく大きいようで、曲がり角に一回しか到達していなかった。つまり、部屋を一周はおろか、半周することすら出来ていないということだ。今更ながら、社員寮に携帯電話を置いてきてしまったことを後悔する。若しそれがあれば、この部屋を安全に照らすことができるのに。
因みに付け加えておくと、Aが持っている携帯は探偵社支給のものの他にもう一つ、昔使っていたものがある。探偵社のものは旧型のガラパゴス携帯、昔のものはスマートフォンだ。更に言うなれば、昔のものも、電話もネットも普通に使える。スマホの方が便利な時もあるが故に、契約を続けている為だ。
だが、出てきた時は着の身着のまま、そちらの方も漏れなく社員寮でお留守番している最中であり、今のこの状況には何の役にも立たなかった。
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
