34話 ページ2
翌朝。
Aが目を覚ますと、昨日と同様に太宰の姿は見当たらなかった。蒲団は畳まれ、服も、外套も、靴も無い。そこまでは昨日と同じだったのだが。
「……？」
玄関の扉に、何か紙のようなものが挟まっていた。昨晩寝る前には無かったはずだ。だとすると、夜の間に誰かが置いたことになる。Aは蒲団を跳ね除け、玄関に駆け寄った。
近づいてみると、そこにあったのは折りたたまれた紙だった。紙を掴んでから玄関の扉を開け、紙を回収してから再び扉を閉める。鍵を掛けた後、折りたたまれた紙を開いた。
そこには、太宰の字で『朝御飯はいらないからよろしく』と書かれていた。Aは思わず眉をひそめた。幾つか可笑しな点があるからだ。
まず、紙での伝言を選択したことについて。この程度の内容ならば、電子書面でも良いはずだ。というか、普段の太宰ならばそうするだろう。今の時代、態々紙とペンを持ち出して文章を書くよりも、携帯で打ってしまった方が早い。それに、太宰が紙に何か書き物をして伝言を寄こす時は、大抵裏がある。
次に、紙を扉に挟んだことについて。紙に書いたことはいいとしても、置いた場所が可笑しい。置いておくのであれば、部屋の中に置いておいた方が安全だ。若しかすると紙が扉から滑り落ちてしまうかもしれないし、すきま風で飛ばされてしまう可能性もある。それに、朝食のことならば、台所辺りにでも置いておくのが妥当だろう。
まあここまでならば、Aも太宰の気まぐれであると考えただろう。若しかすると携帯より手近な処に偶々紙とペンがあったのかもしれないし、若しかすると少しスリリングな伝言でもしてみようと扉の間に挟んでみたのかもしれない。
だが、もう一つ可笑しい点があった。それは、太宰の字体である。
確かにこれは太宰の字体だが、正確に云うと太宰の左手の字体だった。一見すると普通の字に変わりないのだが、太宰の右手の字体と比べてみれば形が違うのは直ぐ解る。筆跡を偽装したい時などに使われる、簡単な手法だった。
一体何故ここで、左手で書くという面倒なことをしたのだろうか。
三つも可笑しな要素が重なっている理由は、一つしか思い当たらない。何らかの重大な理由があって、朝ご飯をいらないと云ってきているのだ。
Aの脳裏に蘇ったのは、昨晩の会話だった。
何これ脅迫状？ まァね。
太宰が書いていた謎の文章。あれは、本当に脅迫状だったのではあるまいか。
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
