winter color of kiss

side Ki ページ2

「おかえり」


外の寒気とは無縁そうな、温かなボアのルームシューズの擦れる音とともに、顔を出したソイツは、少し緩いニットの袖を掴みながら、ゆっくりと俺の方に歩み寄ってきた


「寒かった？赤くなってる」


ちょんっと、温かな細長い指先で、鼻の先を触れられた


「あぁ、めっちゃ寒かった」

「シチュー、あるよ…？」


そう言いながら、その言葉に反するように、ソイツは俺のダウンコートを肩からスルリと脱がした

ぽふっと綿の潰れる音とともに、フローリングに落ちたコートが、俺の抜け殻のままの形で床に落ちる


「まだ、さみぃんだよ、着てたいっ…」


少しだけ上の方にある、そのツンと赤い唇を見上げれば、その形が、ふっと弧を描くように、上がった


「すっかり、身体冷えちゃった？」


そういって、腰に回されたその華奢な手は、じんわりと温かい


「ねぇ、温かいもの食べる？それとも、お風呂はいる？」


俺の背中を、その手がゆっくりと這う
その度に、少しだけ温かみを増す、俺の身体


「だから…寒いんだよ、まだ」


その、温かな背中に、両手を回して抱き寄せた

抱き寄せても、抱きついているように見えるのは、お前との身長差のせいなんだけれども



「ふっ…めずらしいな、甘えてんの？」


そう、誘うような目で、俺を見つめたお前は、ゆるゆると俺の頬をなでた

わざと、ゆっくりと俺に触れるお前の指先は、柔らかく動いて、だけどあえて唇を避けるようにして首筋をなぞられた
触れてほしいようには触れてくれず、少しだけ意地悪だ


「だから、寒いんだよ」

「ふふっ、そんなに、抱きついてきちゃって」

「寒いだけだ」

「素直じゃないね…」



そう言うと、ぎゅっと、更に強い力で抱きしめ返される

ニット越しの肌が、温かい

side Ki→←寒い夜に、一つだけ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す