だから、君の隣で笑わせて (ページ5)

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Ki 5 ページ5

「へー、北山君結構、飲めるんだ～」

「はは、まだまだいけますよ～」

約束していたプロデューサーさんとの会食の日
こじゃれた和食の個室に、高そうな酒がずらりと並ぶ
思いのほか盛り上がり、仕事以外の話でも会話に花が咲き、同時に酒も進んでいく

どうやら彼は中々の酒好きかつ大酒豪のようで、次々に酒を注文しては、俺達のグラスになみなみと注いでいった
さすがの俺も、自分ではっきりとわかるくらいに酔いが回っていた

「ありがとうございます」

それでも、目上の人から継がれた酒を断るなんて失礼なことはできず、俺は酒を注がれたおちょこに口をつけると、ぐいと飲みほした

ふと気になる隣のアイツ
俺はまだしも・・そんなに酒に強くない藤ヶ谷は大丈夫なのだろうか

藤ヶ谷の横顔を盗み見ると、うっすらと染まった頬
手元の日本酒がなみなみ注がれたおちょこは先ほどから、すこしも中身が減っていない

クソ真面目なアイツのことだ、例え気持ち悪くなっても、もういりませんとは言えないだろう

二人が会話に夢中になっているすきに、俺は藤ヶ谷の分の日本酒を飲み干して、自分の空になったおちょことこっそりすり替えた

「今日は、本当にありがとうございました！！」

プロデューサーさんをタクシーに乗せ、そのヘッドライトが小さくなるまで、深く頭を下げ続けた

ヤバい

さすがに飲み過ぎた

お辞儀をして頭を下げると、視界がグワングワンと揺れている
こんなになるまで飲まされたのは、久しぶりだった

「・・いいの？」

「え？」

「飲みすぎだろ、お前」

はっきりしない頭でふと顔を上げると、藤ヶ谷が怪訝そうな表情で俺を見つめていた

「とりあえず、タクシー乗るか」

ぶっきら棒にそういうと、藤ヶ谷は足元のおぼつかない俺の手を引いて、タクシーに乗せてくれた

何も言わない、決して優しい言葉をかけられたわけではないのに

その手から、藤ヶ谷の優しさが感じられて、ただそれだけのことが俺は涙が出そうなほど嬉しかった

後部座席にもたれて、ネオン街を見つめるうちに、気づくと睡魔に襲われてあっという間に夢の中に堕ちた

ふと、温かいものが俺の手を包んでくれた気がして、だけど、藤ヶ谷が手を繋いでくれるなんて夢みたいなこと起こるはずないしと思いながら、夢ならばせめて今だけでも、と思いながら、その細長い感触に指を絡めた