だから、君の隣で笑わせて (ページ22)

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Ki 22 ページ22

藤ヶ谷の言葉が信じられなくて、俺は思わず勢いよく視線を上げた
藤ヶ谷の視線は、冷たく俺を見下ろしていた

「溜まってンの。イラつく・・お前が付き合ってよ」

そういった藤ヶ谷が、俺の頬にそっと手を添えて、頬を撫でるように触れてきた
指先は、凍えるように冷たい

「っ・・！」

驚きなのか、戸惑いなのか、自分でもわからないけれど、俺はただ息をのんで、藤ヶ谷の顔を見返すことしかできない
藤ヶ谷の瞳は、まっすぐに俺を見下ろしていて、その鋭い眼光の奥の気持ちが読み取れない

だけど・・だけどなぜだろう

その瞳の奥に、隠してはいるけれど、本当は戸惑いと、哀しみの色を宿しているように見えるのは

なぁ、やっぱりお前はまだ・・お前なりの孤独を抱えたまま、今ももがいているのだろうか

「・・いいよ」

気づいた時には、俺の口が勝手にそう口走っていた

「・・は？」

俺の発言が意外だったのか、藤ヶ谷は本当に、驚いたようにな表情で、動きを制止させた俺の顔を凝視していた

「お前・・俺の話聞いてたか？」

冗談のつもりだったのか
それなら、かなりブラックジョークだけど

藤ヶ谷は、自分が言い出したくせに、明らかに動揺しているように見えた

「聞いてたから言ってんだろ・・藤ヶ谷が・・そうしたいっていうなら・・そうしろよ・・」

藤ヶ谷を、試したかったわけじゃない

単純に…藤ヶ谷がしたいようにすればいいと、激しく動揺する一方で冷静に思っている俺がいた

そういって、藤ヶ谷を見上げて、もう一度しっかり瞳を見つめると、その瞳はやっぱり戸惑って揺れていた

「お前・・バカじゃねぇの・・」

藤ヶ谷が、パッと視線を外して、うつむいたまま、吐き捨てるようにそう言った

「・・藤ヶ谷が・・・それで、軽くなるっていうなら・・いいよ」

藤ヶ谷の真意はわからない

藤ヶ谷にしかきっとわからない寂しさや、葛藤があるのだろう
きっと、俺に踏み込まれたくない領域を抱えて、だけど・・一人では抱えきれなくて・・

藤ヶ谷が先ほど見せた涙の意味は分からないけれど
もし、ほんの少しでも、俺にすがってくれるなら・・俺は、藤ヶ谷の力になってやりたい

辛いときに、言葉はいらなくて、ただ側にいて、その冷えた心と体を温めてやれるのならば、それも悪くないと思うから