だから、君の隣で笑わせて (ページ11)

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Ki 11 ページ11

あの日の夜から、１週間たっても、藤ヶ谷は特に変わらずに、いつも通り俺から遠いところで、一人静かに時を過ごしていた

やっぱり、あの日俺とキスしたことなんて、きっと覚えていないのだろう

昔、酔って玉とチューした、とかいってたっけ
ノリでキス、なんて・・うちのセクシーキングにとっては、なんともない事なのだろうか

「あ、じゃぁ撮影行ってくるー」

舞祭組チームが、連れ立って、楽屋を出ていった

「・・・・」

「・・・・・」

玉は、ドラマの撮影が押しているようで、遅れてくると先ほどマネから連絡があった
まえあし組で撮影の俺たちはしばし待機となった

強制的に、二人きりになった楽屋

会話がない、沈黙の空気が、重い

暇つぶしに読もうと思って持っていた啓発本を盾にして、、ソファに座る藤ヶ谷のほうをこっそり窺うと、すでに小説のページを開いている姿が目に入る

藤ヶ谷を邪魔しないように、俺も息を潜めて同じように本に目を落とした

「おー！北山ー！」

突然のノックと共にドアが大きく開いて、シンとした楽屋に、突如響き渡った声

「あ、大倉・・」

ドアのほうに目をやると、俺と違って長身の、整った顔が爽やかに笑っていた

大倉は、俺を見つけてニコッと表情を緩めると、嬉しそうに俺のほうへ近づいてきて、
隣に腰を下ろした

「なんか、キスマイ隣のスタジオにおるってきいて、暇やから顔見に来た」

「え、お前らもいたの？」

大倉とは、プライベートでも仲はいいけれど、最近はお互い仕事が忙しくてご飯にも行けていなかったから、
偶然のタイミングとはいえ、大倉が訪ねてきてくれたことが純粋に嬉しかった

「藤ヶ谷も、久しぶりやなぁ」

「こんにちは」

大倉が藤ヶ谷のほうにも、同じように笑ってみせると、藤ヶ谷も読んでいた小説を置いて、柔らかく笑って見せた

大倉とは、久しぶりだったこともあって話に花が咲いた

仕事の事、プライベートの近況

あぁ、コイツと久しぶりに飲みに行きたいな、そんなことを考えていた時だった

「すいません・・大倉君、もういいですか？」

小説を読みふけっていると思っていたはずの藤ヶ谷が、唐突に声を上げた
その一言は、言葉は優しい反面、早く帰ってくれといいたげな声色だった