±10cmから見た日常 (ページ34)

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藤ヶ谷との、入れ替わり生活が、突然終わった

もちろん、自分の本体に戻れて、嬉しい

ものすごく

なのに、何故か喪失感というか、寂しさを感じてしまうのは、きっと俺は、藤ヶ谷太輔の体から見る、藤ヶ谷のことも、大好きだったから

大体のことは知っていると思っていた藤ヶ谷の、いろんなことを発見した
それと同時に、俺自身のいろんな表情を、藤ヶ谷を通して見せてもらった

二人で、騒ぎながらもここまで一緒に生活していた一ヶ月

最後くらいと、掃除に取り掛かると、いろんなところに、俺の痕跡が残っていて
それをきれいさっぱり片付けてしまうのが、すごく寂しくて、切なくて

だけど、藤ヶ谷の気持ちを無視して、そんなことはできないからと、悲しみをこらえながら、荷物をすべて片付けた

俺の私物がなくなった部屋は、ずっと広くて、寂しく感じた

だから、藤ヶ谷に引き止められたときに

内心、めちゃめちゃ嬉しくて、ドキドキした

また、キスしたら入れ替わるのかなんて、もう二度としなければいいだけの話なのに…
なんだか、ふとそんなことを口に出してしまった

そしたら、藤ヶ谷が近づいてきて、

いろいろとごちゃごちゃ言っているうちに、

その唇が、重なった

初めてではないはずなのに、ドキドキとして、熱くて…

互いの唾液が混ざり合う音が、妖艶で
あり得ないほどに心臓がうるさい

思わず、藤ヶ谷の背中に手を回した

片手では足りなくて、持っていたはずの合鍵を、落としてしまって、だけど…
藤ヶ谷から離れたくなくて、ぎゅっと…

その背中にしがみついた

藤ヶ谷が、好き

どうしようもないくらい

馬鹿だな、俺

アイツと、離れることになってから気づくなんて

そう思っていたら、藤ヶ谷に身体を抱えられた