±10cmから見た日常 (ページ25)

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週刊誌にでもすっぱ抜かれたら

いや、別に俺たち二人が出かけていることなんて、スキャンダルでも何でもないか

でも、ファンの子たちにでも見られたら、
どうせＳＮＳにでも、「藤北デート！」とか好き勝手かかれんのに

あーつ…

「おー！藤ヶ谷の車、一回運転してみたかったんだよ！」

俺の気もそっちのけで、ルンルンの北山は、キーを差し込むとテンション高め

「お前、仕方なくそっちなんだからな！ぶつけたりすんなよ！？」

「え、俺以外と運転うまいのよ？ドラテク披露してやんぜー！」

万が一誰かにみられたときに・・

車は俺のモノだって特定されているから

しぶしぶ運転席に北山を座らせた

あー、俺の愛車なのに

クソ

なんだか、恋人を横取りされた気分になる

「そいじゃ、出発ー！」

見た目はどう見ても俺なのだが、いまいち北山のチャラさが抜けきれない
ゆるい感じの偽藤ヶ谷太輔が、ハンドルを切った

「なぁなぁ、腹減らね？」

「え」

「あ、アソコ、ドライブスルーあんじゃん」

「え？！」

なるべく、さっと行って、人目につかないうちにさっと帰りたいのに
北山は俺の意見を聞く暇もなくさっさとドライブスルーの列に並んでしまった

仕方なく、俺はかぶっていたハットを目深にかぶりなおして下を向く

「カフェオレとー、ブラックとーあとは、」

俺の気をよそに、北山はさっさと注文を済ませてちゃっかり自分用のサンドイッチまでテイクアウトしていた

「あ、ここの旨いね！また今度行こうぜ！！」

「・・・」

あぁ、なんでこいつはこんなに楽観的なのか

自分が嫌になってくる

甘めにカスタマイズされたカフェオレを一口含む
あれ？甘さ、ちゃんとカスタマイズされてる・・？

「ほい、藤ヶ谷ー」

「え」

ぽんと渡された紙袋

「お前にはこっちかなって。人気なんだろ？」

紙袋の中には、濃厚そうなチョコレートのスコーンが入っていた

「・・ありがと」

「おう！」