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side M ページ45

「・・・たま」

俺が呼び掛けたときには、玉は、キタミツのベッドの端のほうで、小さくなって震えながら疼くまったままだった

「・・ごめん、俊くん・・」

「大丈夫・・キタミツは?」

「今は・・寝てる」

「そっか・・」

「っごめん・・俺、どうしていいかわからなくて・・」

「うん、いいよ。ありがとう、教えてくれて」


俺が優しくそう言うと、玉は真っ赤にはらした目を向けて、俺を見上げてきた
その身体を、包み込むようにそっと抱きしめた

ベッドに寝ているキタミツは、もともと小さい身体がいっそう小さく感じられるほどに痩せた気がする
食べ物をいっぱいに詰め込む頬は、肉が落ちてほっそりしてしまった
どことなく、顔色も悪い気がした

『なーなー、ここどう?ここよくない?』

あの、キラキラした目のキタミツを、もう一体いつから見ていないのだろうか

病院で、震えて叫んでいたキタミツの姿が思い出される

「ミツ・・多分、食べれない・・んだと思う」

「・・そっか」

「俺が・・無理、させて」

「裕太のせいじゃないよ」

そう言って背中を擦ってやった
その瞬間、ぼたぼたと、大粒の涙が溢れる

「ミツ・・急に怯えだしたんだ」

「・・」

「俺が・・洋服緩めてやろうと思ったら・・多分・・思い出した、のかな・・」

「・・・そっか」

「俺の、俺が、ミツをっ・・」

「違うよ」

その言葉の続きを遮るように強く言葉をかぶせた

「ねぇ、宮田・・ミツはさ、ミツ・・」

「うん」

「ガヤに・・見ないで、って・・うなされながら、いったんだよ・・」

「っ・・」

「ミツ・・もしかして、ガヤの前で・・ガヤも・・ミツが・・される、トコ・・」

「大丈夫だからっ!!」

裕太を、抱き寄せて、ぎゅっと抱きしめた

「う・・うぅ・・そんなの・・ひど、すぎる・・」

「そうだね・・」

「ねぇ、ガヤはもしかして・・」

そうかもしれない、と
俺はずっと思っていた

辛すぎて、横尾さんや、ずっと自分を責め続けているニカに、あの日のことを聞くことはできなかった

だけど、がやさんが失った・・いや、忘れたかった記憶はきっと、キタミツの・・苦しむ様子

愛する人の、そんなボロボロの姿、耐えられない
そして・・キタミツが、最も見てほしくなかった人、それはきっと


「裕太・・」
 

何一つ、終わってない

キタミツも、がやさんも
俺達も

時間は、ずっと止まってしまったままだ

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ピンクピーチ(プロフ) - あこさま!いつも温かいメッセージありがとうございます!励みにさせてもらってます!!もう少しで幸せな二人編に突入するので、もう少し頑張ります^_^ (2019年11月15日 15時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - こんにちは!更新されるたびに泣きながら読んでます。みんなの心の傷が癒えてふたりがしあわせな時間を早く過ごせることを願ってます。ピンクピーチさまもしんどい部分の更新大変だと思いますががんばってください!応援しております^^! (2019年11月15日 14時) (レス) id: c75777a11f (このIDを非表示/違反報告)
ピンクピーチ(プロフ) - みってぃーさん» はじめまして^_^日課にしていただけて大変光栄です!そして、温かいお言葉!こちらこそ泣きながら読ませていただきます!!これからも、更新励みますので、良ければ読んでやってください★ (2019年11月11日 18時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)
みってぃー(プロフ) - いつも更新ありがとうございます!毎日更新されているか確認するのが日課になってます。そして、更新された話をここ最近泣きながら読んでいます。作者様の作品はどれも心に刺さるものばかりで尊敬しています。大変だと思いますが更新頑張ってくださいね。 (2019年11月11日 17時) (レス) id: 4e432f1ab1 (このIDを非表示/違反報告)
ピンクピーチ(プロフ) - キスマイさん» ご愛読ありがとうございます!これからは、藤北以外のメンバーの心情も複雑に絡みながら展開していきます…また楽しんでいただけたら、嬉しいです^_^ (2019年10月27日 10時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピンクピーチ | 作成日時:2019年10月23日 15時

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